水質汚濁防止法、土壌汚染対策法など我が国の環境保全関連や、労働安全衛生関連の法令では、「六価クロム」は有害物質に指定され、その使用方法、排出方法、排出濃度等には厳しい基準が定められています。
またヨーロッパの電気・電子機器の有害物規制(RoHS)等に対応するために、ゴム、プラスッチク、塗料、化成皮膜、セラミックなどの六価クロム含有量(ppm)が問題になっています。
六価クロムとは
六価クロムとは何でしょう。クロムという金属は、元素番号24、融点1905℃、比重7.1の金属元素で、化合物の殆どが有色であることから「chroma(色)」と名づけられたといわれています。
クロムは、装飾用クロムめっき・工業用(硬質)クロムめっきのほかに、高速度鋼、ステンレス鋼、ニクロム、KS磁石鋼などの合金成分として使われています。
クロム金属は、水には溶けませんが、クロム化合物は水によく溶けます。この場合、クロム化合物中のクロムは、2~6個の正の電荷をもったプラスイオンになります。電荷をいくつ持つかは、化合物によります。
例えばクロムめっき液は、市販の無水クロム酸を水に溶解して、クロム酸(H2CrO4)をつくります。反応は、次の通りです。
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クロム酸は液中で、水素イオンとクロム酸イオンに解離します。
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直流電解によって、陰極では水素ガス(H2)が発生します。クロム酸イオン(CrO42-)は陽極に引き寄せられ、陽極面の触媒作用で六価クロムイオン(Cr6+)と酸素(O2)になります。六価クロムは陰極で、段階的に電子を得て、金属クロムになります。
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このように、六価クロムは、めっき液中ではクロム金属の供給源として重要な役目を果たしますが、めっき皮膜である金属クロムのなかには、六価クロムは存在しません。
一方、亜鉛めっき後のクロメート処理について考えてみましょう。電気亜鉛めっきや溶融亜鉛めっきは、防食めっきとして建築材料、構築物、船舶機材などに用いられますが、亜鉛は空気中の酸素と反応して、容易に酸化亜鉛の白錆を形成してしまいます。
そこで考えられたのがクロメート処理です。これは亜鉛めっきした製品を、クロム酸を主成分とするクロメート処理液に浸漬して、めっき皮膜の表面にCrO3・Cr2O3・nH2O などの六価クロムを含む耐食性に優れたクロメート皮膜を形成させるものです。この皮膜は六価クロムの含有量が多いほど耐食性にすぐれ、何らかの理由でクロメート皮膜が破壊された場合でも、周囲の六価クロムが働いて耐食性を補修する自己修復性に優れています。
クロメート皮膜には、光沢クロメート、有色クロメート、黒色クロメート、緑色クロメートなどがあり、これらの六価クロム含有量は異なりますが、一般に20~120mg/m2といわれています。