金型を構成する材料で、主にパンチ、ダイ、ストリッパおよびバッキングプレートなどの主要部分に使われる材料です。
(1)工具用炭素鋼(SK材)
SK材の炭素含有量は0.6〜1.5%です。SK材は1種から7種まであります。SK1は1.3〜1.5%の炭素量、SK7は0.6〜0.7の炭素量です。SK1→SK7に向かって炭素量は減少していきます。ちなみに、炭素量が0.6%未満になると機械構造用(SC材)となります。
プレス金型では、SK3とSK5が多く使われています。
プレス金型での使い方としては、少量生産用のパンチ、ダイに使われます。
SK材の硬さは熱に弱いので、十分な焼き入れをしても、プレス抜き加工のように加工熱の伴うものでは長い寿命を期待できません。そのため、パンチやダイとして使うことより、バッキングプレート等の補助的な部分へ使われることが多い材料です。
(2)合金工具鋼(SKS、SKD)
合金工具鋼はSK材にタングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびバナジウム(V)などの特殊元素を添加して特性を改善したものです。
(1)SKS材
プレス金型用にはSKS3が使われます。SK材にCr、Wが添加された材料です。SK材に比べ焼き入れの変形量が1/2と小さくなっています。現在では焼き入れ後にワイヤカット放電加工で形状加工されるため、熱処理変形はあまり気にしなくなりましたが、以前は大きな関心を持たれていました。
中・少量生産のパンチ、ダイに使われます。その他では、焼き入れを必要とするストリッパやパンチプレートなどに使われます。
(2)SKD材
ダイス鋼と呼ばれます。SK材にCr、MoおよびVが添加された材料です。SKD11がプレス金型ではよく使われます。パンチ、ダイの主流となる材料といえます。中量から多量生産用の金型に使われます。熱処理変形はSKS材より、さらに小さくなっています。
ワイヤカット放電加工での変形が少なく、加工しやすいことも金型材の主流となった要因もあるようです。通常の焼き戻し(約180〜200℃)よりも、高温焼き戻し(約500〜550℃)の方がワイヤカット放電加工での変形がさらに少ないことから、この条件で使うことが多くなっています。ところが、硬度が低下(58HRC程度)するため工具寿命が悪くなる欠点もありました。鋼材メーカーでは高温焼き戻ししても、硬度が60HRCを保てるような材料が開発されています。ただし、このような材料は熱処理条件が微妙に変化しているので注意しないと、期待する熱処理特性がでないことがあります。