打ち抜き型設計の要点をまとめたものです。
(1)固定ストリッパを使う理由
打ち抜き型ではダイを通過して得られるものが、製品です。したがって、ダイプレートの上に残るものはスクラップです。多少の変形があっても製品に影響がなければ問題とならないので、材料を押さえる必要のない構造でよいのです。
(2)固定ストリッパとストックガイド
ストリッパは、パンチに付いた材料をはぎ取るのが、役目です。しっかりと固定されていることが、はぎ取るには有利です。固定ストリッパの下は材料が通過する空間です。大きな空間を作ると材料は空間の中を移動して、打ち抜き加工がやりにくくなります。材料に合わせて幅や、高さを規制すると、打ち抜き作業は行いやすくなります。このようにすることで、固定ストリッパ下の空間は「材料ガイド空間=ストックガイド」となります。ストックガイドはプレス作業をしやすくする工夫をしておくと良いです。
(3)固定ストリッパ構造は中が見えない
プレス作業をしているときに、作業ポイントが見えないことは不安です。これが、固定ストリッパ構造の欠点です。不要な部分をカットして、できるだけ作業ポイントが見えるようにしましょう。
(4)金型の取り付け(金型段取り)
金型はプレス機械に取り付けて使うものですから、取り付け方法を考慮してパンチ、ダイホルダは設計します。シャンクは便利な上型取り付け手段ですが、扱い方によっては、危険もあります。おおよそ30トン以下のプレス機械に使う小さな金型を対象にして使いましょう。
(5)パンチ、ダイの寸法
抜き加工では抜きクリアランスが重要な役割を果たします。クリアランスはパンチ、ダイのすきまです。クリアランスの取り方によってダイとパンチの寸法は変化します。打ち抜き加工では製品寸法=ダイ寸法とします。パンチはクリアランス分小さくします。
(6)パンチをダイにどれだけ入れるか
ダイの上に材料を置き、パンチを押しつけて抜きます。理屈で考えれば、パンチ下面がダイ上面と同じになれば、分離して、材料はダイの中に入ります。しかし実際には、材料厚さが1mm程度のものであれば、パンチをダイの中に1mm程度入れます。
何故こうするのかですが、プレス機械も多少は伸び縮みします。パンチが材料に接し加圧を開始すると、プレス機械のフレームは伸びます。伸びながらパンチを材料に押し込んでいく状態です。加工が進むにつれ、必要な抜き力は減少します。ある限界を過ぎると、伸びたプレス機械のフレームが一気に元に戻ります。このときに元の位置以上に進行します。この減少をブレークスルーと呼びます。これ意外に運動部分の各部のすきまが関係したりもします。このようなことが原因で、下死点は変動します。そのため、打ち抜き加工の際には、パンチをダイの中にわずか入れるようにするのです。