ノックアウトは常に材料と接しています。材料には加工油が塗布されていることが多く、その油で材料がノックアウトに密着して、ダイから排出した後でも、製品がノックアウト面に張り付き、2枚打ち(ノックアウトに製品を付けたまま、再度材料を加工してしまうトラブル)してしまい、金型を壊すことがあります。この現象は、作業者が注意していても押さえきれるものではありません。金型構造上から対策しておくことがよいです。
【図1】に示すように、ノックアウトにキッカーピンを入れておくことで材料の密着を防ぎます。キッカーピンは、1本の時には、重心位置を複数入れるときには、バランスを考えて入れます。
キッカーピンの突き出し量は0.5mm〜1.0mm程度です。製品回収をエアー飛ばしで行うときでも、ノックアウトから製品の外れる姿勢が同じとなるので、製品の飛び方向が安定します。突き出し量の長いキッカーピンでは、製品が飛ぶときにピン先端が製品の穴に引っかかり、事故の原因となったりしますから、突き出し量は少ない方がいいです。
ノックアウトの輪郭形状とダイ形状を完全に合わせることは、あまり良くありません。抜き加工の時に発生する金属の粉等がノックアウトとダイのすきまに入り、焼き付きを起こしたりします。ノックアウトの動きがスムーズに行かない原因になることもあります。
【図2】に示すように、形状の安定した面(直線部等)でガイドし、細かな形状部分や角部のRやC面とり部分も逃がすようにして、問題となりそうな部分を少なくしておきます。
R部の逃がしでは、凸R部はR形状を小さくして逃げるのではなく、C面で逃げるのが良く、凹R部分は角とするか小さなRとして逃がすようにします。長い直線部分の中間も逃がすと良いです。