【図1】が総抜き型の基本的な構造といえます。
総抜き型は複合加工(外形抜きと穴抜き)です。複合加工の構造の作り方は「複合金型構造の作り方」で説明しています。その後、「総抜き型の構造」を説明しています。参照して下さい。
今回は、更に細かな部分について解説します。
金型にとって、金型を構成するプレート構成は大変気になります。金型コストに影響するからです。総抜き型のプレート構成は【図1】に示す7枚構成となります。ダイプレートは中に、ノックアウトを組み込む必要があるため少し厚くなることが多いです。
パンチが大きい場合、パンチプレートを使わずに直接、ダイホルダーに固定することもあります。
- ※
- 総抜き型の構造は逆配置構造です。逆配置構造ではパンチが下、ダイが上となります(外形抜きで考えて)。パンチホルダ、ダイホルダの関係がおかしいと感じる人がいると思いますが、プレス機械のスライド側に取り付けられるホルダーをパンチホルダ、ボルスタ側に取り付けられるホルダをダイホルダと統一して扱うこととします。
小さな製品形状を扱うときには、下型の外形抜き用のパンチプレートの下に、バッキングプレートを採用することもあります。上型の穴抜き用のバッキングプレートを外すことは少ないと思います。
それぞれのプレートの材質を列記します。
パンチ、ダイホルダ及びパンチプレート:S50CまたはSS400
バッキングプレート:SK3〜SK5
パンチ、ダイプレート:SKS3またはSKD11
です。
【図2】は、ダイプレートを2分割したプレート構成です。
ノックアウト用の裏座ぐりが面倒なときや、ダイプレートの材料を節約したいときなどに使われます。
分割で生まれたプレートの呼び名を、ここではスペーサプレートとしましたが「遊び板」などと呼ぶこともあります。このプレートはノックアウトの可動のためのものですから、材質的にはS50CやSS400を使います。
総抜き型はプレート枚数が多くなるので、工夫した金型作りをすることがあります。ワイヤカット放電加工で金型を作るとときの方法です。
ダイプレートをワイヤカット放電加工で作ると、ダイの中身が切り落とされますが、これをパンチとして使います。1枚のプレートからパンチ、ダイができます。薄板の時にはワイヤ放電加工のテーパ加工を利用して作ります。
同様に、ストリッパプレートを作る際に、切り落とされる中身をノックアウトに利用します。このように工夫すると金型材料を節約できると同時に、金型製作も早くなります。少量生産の製品加工に適しています。
総抜き型の上型はプレート枚数が多くなります。【図1】に「締結A」で示したようなボルト及びダウエルピン(ノックピン)の使い方となりますが、貫通するプレートが多く信頼性に問題が感じられることがあります。スペーサプレートを使う場合はなおさらです。【図2】に「締結B」「締結C」で示すように、ダイプレートと穴抜きパンチプレートを締結して一体化し、上型としての締結は別にする場合が多くあります。
位置関係を決める部品はダウエルピンですが、ピンの長さが長くなるほど信頼性が悪くなります。ダウエルピンの通るプレート数は3枚程度までに押さえるのがよいとされています。
締結の方法と金型の組立作業には関連があります。プレートの締結と金型の刃合わせ作業のやり方を考えた締結とすることが必要です。