プラスチックの強度を改善するためにガラス繊維を添加したプラスチックが使用されていますが、通常のガラス繊維の長さは0.3〜0.6ミリ程度に止まっています。しかし最近では、ガラス繊維長さを6〜15ミリと極めて長くして添加する長繊維強化プラスチックが開発されています。
長繊維強化プラスチックの特徴は次の通りです。
(1) | 短繊維の強化プラスチックに比べて顕著な衝撃強度の改善が得られる。氷点下などの低温でも衝撃強度が低下しにくい。 |
(2) | クリープ特性、疲労特性が優れる。 |
(3) | 耐熱性も良好で、高温下での引張強さ、曲げ剛性が良好である。 |
(4) | ガラス繊維の配向が改善されており、そりや変形が比較的しにくい。 |
(5) | 短繊維に比較して外観が美しい。 |
長繊維強化プラスチックは、軽量高剛性の成形品を開発する上では非常に興味深い材料であり、自動車や農業機械などの大型成形品の部品素材として応用がスタートしています。
長繊維が射出成形において、シリンダーやスクリュー、ゲートを通過する際に、切断や折れ曲がってダメージを受けにくくするためには、成形機の改良や金型設計における工夫が必要になってきます。
また、ガラス繊維とプラスチックの界面強度が重要であり、ガラス繊維表面の改質処理が必要になってきます。
現在、ポリプロピレンの長繊維強化樹脂が市場で販売されており、自動車部品、建材関係等での採用実績があります。今後は部品の軽量化、高強度化、コストダウン、モジュール化に寄与する材料としての用途が広がってくると考えられます。アメリカ合衆国やヨーロッパでも採用の事例が増えています。
金型の設計技術やノウハウの蓄積は始まったばかりですので、試行錯誤しながら最適化を図っていくことが必要です。