PET樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の略称です。
PET樹脂は、溶融温度が270℃近辺で、成形温度は、270~280℃であり、比較的高温で射出成形を行います。この樹脂の特徴の一つとして、流動性があります。融点以上では流動性が良好ですが、固化が始まると一気に流動がしにくくなります。つまり、樹脂温度の変化と流動性が密接に関係しているということになります。金型の温度管理、樹脂温度管理は、PET樹脂には必須の項目になります。多くの場合、PET樹脂の射出成形ではホットランナーが使用され、さらにバルブゲートが選択されます、これは、ゲートの開閉遮断を機械的に行うことで流動の管理を確実にしたいがためなのです。
流動が良好なので、金型のクリアランス管理や充填圧力による金型の変形にも配慮が必要になります。特にホットランナーのマニホールドデザインでは、変形防止、熱膨張代の管理などがポイントになります。
また、PET樹脂は、水分に敏感に反応しますので、成形材料のペレット予備乾燥は徹底して行い、管理レベルも高くしなければなりません。水と反応すると加水分解を起こします。したがって, PET樹脂の射出成形では材料予備乾燥装置が必須になります。
PET樹脂は、流動状態から固化するプロセスにおいて結晶のサイズが大きくなり球晶となりやすくそうすると透明ではなく白濁した成形品になってしまいます。ですから、透明な成形品を作りたい場合には、球晶の成長を抑制するために急速に冷却をしなければなりません。したがって、金型には急冷するシステムを備えなければなりません。金型温度は5~15℃に維持する必要があり、チラーが用いられます。金型内での樹脂温度の変化領域は、270~280℃から5~15℃もの温度勾配を管理しなければなりませんので、いかにPET樹脂の射出成形が困難であるのかがわかると思います。
現在では、PET樹脂の射出成形技術は高度化し成熟域に到達しており、超多数個取り金型(100~200個取り)のバルブゲート金型技術が実際に量産モードで世界で採用されています。
PET樹脂の原材料は、石油系素材ですが、現在ではバイオPET樹脂が開発されています。これは原材料を植物とし、そこから石油由来のPET樹脂と全く同じ組成の樹脂を生産することができるようになっています。そして商業ベースでの材料供給も始まっています。
PET樹脂の原材料の供給地は、原油生産国だけではなく農作物生産国へ徐々にある割合シフトをしていくものと予測されています。