射出成形に使用される熱可塑性樹脂(Thermoplastic resin)は、金型の中に加温されて液状になった状態でキャビティ内へ注入されて、金型の表面に接触することで熱量を奪われて冷却され、固化します。
このときに、液体のときの体積は、固化する際に体積収縮を起こして縮みます。この現象を「成形収縮」と呼んでいます。英語ではshrinkageと言います。
成形収縮は、プラスチック射出成形品を作る上では大変重要な物理現象です。所望の寸法や形状の射出成形品を生産するためにはこの物理現象を的確に理解しなければなりません。
さらに、射出成形金型の設計や機械工作をする際には、成形収縮を考慮した寸法と寸法公差でキャビティなどを作る必要があります。
成形収縮は、熱可塑性樹脂の種類によって大きく範囲が決定されます。つまり、樹脂の種類によって収縮率は左右されます。しかし、樹脂の種類以外にも以下の要素を考慮しなければなりません。
1.キャビティ表面温度
2.成形品の肉厚
3.成形条件(保圧)
4.ゲート形状
5.ゲートサイズ
6.樹脂温度
7.フィラーの種類
8.樹脂の流動方向
9.材料ペレットの予備乾燥
10.エアベントの排気効率
実際の金型設計では、これらの要素を総合的に検討して、成形収縮率を意思決定して、所定の技術計算式でキャビティの製作寸法を導き出します。
最も信頼できる収縮率のデータは、自身で成形試作した際得られた生データの解析から得ることができます。射出成形試作を行った場合には上記のデータをできるだけ正確に収集しておいて、寸法データと照合する作業が重要です。これらの生きたデータをどれだけ蓄積できるかが技術力を左右します。
ビジネスの世界では大差で勝利することはなかなかありませんが、僅差で必ず勝ち抜くことは可能です。小さなことを地道に積み上げる技術者魂を再確認することが大切です。