プラスチック材料の金属に対する一般的な弱点は、耐熱性が十分でない点があります。しかし、最近の実用化研究によって、耐熱性は飛躍的に改善され、荷重たわみ温度が400℃に達する樹脂も量産が始められています。
耐熱性高分子は、温度によって軟化したり、融解しないようにするためには、無定形高分子ではガラス転移点(glass transmition temperature, Tg)が高い必要があります。また、結晶性高分子では融点(melting point, Tm)が高い必要があります。
融点は、固体と液体が平衡状態にある温度なので、自由エネルギーが0になる温度であるとも言えます。
そこで、融点Tmは、下記の式で表すことができます。
Tm=△Hm/△Sm
△Hm:融解時のエンタルピー
△Sm:融解前後のエントロピーの変化
△ Hmは、融解に要する熱エネルギーであるので分子間力に関係します。これを大きくするには水素結合によって強い分子間力が働くアミド基の導入が検討されます。分散力も強い分子間力なので、揺らぎやすい電子を持った共益二重結合、ベンゼン環の導入も効果が見られます。
△ Smを小さくするためには、融解しても分子鎖の配列状況があまり大きく変わらない分子構造が向いています。そのためにはベンゼン環や複素環を導入して高分子の鎖を頑丈にする方法が採用されます。
脂肪族ポリエステルや、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどではTmは高くなります。
さらに耐熱性高分子では融点、ガラス転移点が高いだけではなく、熱酸化、熱分解しにくいことも重要になります。熱酸化、熱分解を調べるためには熱重量測定と示差熱分析が行われます。
さらに高精度な計測を行うには示差走査熱量計(DSC)が使われます。DSCによれば、結晶化の発熱ピークがグラフで計測ができるようになります。融解熱と結晶化吸熱ピークの関係を検討することができるようになります。
耐熱性高分子は世界中の高分子化学によってどんどんいろいろな樹脂が開発を続けられています。軽量で高耐熱の素材は様々な分野で切望されています。
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- 参考文献:『新素材III 有機材料編』(文部省大学共同利用機関放送教育開発センター制作・発行)