ここでは建築家、エンジニア、思想家のR.バックミンスター・フラー(1895~1983)が提案した「最も軽い構造体」について解説します。
(1)最も軽い構造体
R.B.フラーの提案した「最も軽い構造体」は正三角形の梁で構成されます。正三角形の3つの各辺は、互いに引っ張りの力(張力)で支えることで安定した形が保てます。これは、蝶つがいを持つ等しい長さの棒を、つっかい棒で支えている構造で壊れません。ちなみに、(正)四角形は、菱形に変形します。張力と圧縮力による構造体の軽さと強さの比較は、自転車と荷車の車輪から理解できます(【図1】)。
(2)コンセプト
彼は、地球に住む生物のバランスの重要性を提唱するために「宇宙船地球号」の造語を編み出しました。そこで、「より少ない物質やエネルギーで、より多くのことを成す」ためのコンセプト(思想)を「エフェメラリゼーション=陽炎(かげろう)化」として提案しています。
均等の引っ張りの力で支えられた正三角形ユニットからなる構造物は、「より少ない材料で、より大きな空間と、より大きな強度を実現できる構造体」で、ジオデシック構造と呼ばれています。スポーツドームの屋根や宇宙衛星の大型構造体の骨組などに見られます。
彼の独創的な提案では、巨大なジオデシック構造からなる球体は、太陽熱で熱せられた内部の空気の浮力により浮き上がることができるとしています。(【図2】)