かさ歯車は2本の回転軸間で円錐形状の斜面の部分に加工した歯形が同形状の歯形の相手歯車と噛み合い、軸間で回転力を伝える用途に用いる機械要素部品である。
構造・用途・使用事例
構造
図1にその外観写真を示すように「すぐ歯 (かさ歯車ストレート)」と「まがり歯(かさ歯車スパイラル)」がある。歯車は歯のかみ合いが重要であり、同じ歯の形状をした歯車を使用しなければならない。また右ねじれの歯車には左ねじれのまがり歯が噛み合う。まがり歯のねじれ方向は図1に示す様なねじれ方向となり、大きいかさ歯車が右ねじれの場合、噛み合う小さなかさ歯車は左ねじれとなる。まがり歯はすぐ歯と比較した場合、常時噛み合っている歯数の噛み合い率が大きく、静音でなめらかな動力伝達を行うことが可能なので、主にまがり歯を使用するのが一般的である。
図1.かさ歯車の外観とねじれ方向
用途
かさ歯車は駆動軸と従動軸が同平面で、角度90°に交わった位置関係で使用できる機械要素部品である。両歯車の位置が理想的な組み立て位置から変化した場合、バックラッシュ*1の大きさが変化し伝達動力が変わる。バックラッシュ量は小さな歯車の位置を変化させて調整する必要がある。
注釈
- *1
- バックラッシュとは送りねじや歯車等の互いにはまり合って運動する機械要素部品において、運動方向に意図して設けられた隙間のこと。
使用事例
かさ歯車をテーブルの切換え手段として使用した事例を図2、図3で示す。
図2は手動ハンドルの先端についた、かさ歯車が送りねじの右端に取り付けた歯車と噛み合って、ねじ軸を回転させてテーブルを移動させる構造となっている。これらの構造はテーブルを細かく移動させることができ、装置のメンテナンスなどを行う際に用いられる。
図2.手動ハンドルによるテーブルの移動
図3はテーブルの自動送り機能を持っており、モーターがねじの左端にクラッチとギヤボックスを介してねじと結合している。これらの構造はテーブルでの自動搬送をする際に用いられる。ハンドル送りとモーター送りの選択は手動ハンドルを手前に引いて、手動回転力の伝達を切ることで、センサーがその切断を検知する。またクラッチを繋ぎ変えることでモーターによるテーブルの移動を変化させる構造となっている。
図3.自動操作によるテーブルの移動
図4にかさ歯車を用いた別の実施例を示す。車の後輪の駆動に使用されているデファレンシャルと呼ばれる機構で、カーブする場合、後輪の左右両輪の回転数の差を吸収する機構である。エンジン駆動軸の回転力を左右の従動軸に伝達する際その回転方向を90°に変換する部分と両軸の回転数の差を吸収する部分にかさ歯車が使用される。エンジンの回転力をかさ歯車1から、かさ歯車2に伝達して、左右の従動軸を回転駆動している。この2段目のかさ歯車を用いた機構で、左右の両従動軸が等しい場合はかさ歯車1は回転しないが、両軸の回転数が異なる場合はかさ歯車2が回転してその回転数の差をキャンセルする様に動く機構となっている。
図4.かさ歯車によるデファレンシャル機構
選定ポイント
選定ポイントは下記2点となる。
歯数比
歯数比(減速比)は噛み合う歯数の選択によって決定する。図5の歯数及びR(歯数比)によって選択する。
図5.歯数と歯数比(減速比)
取付構造の選定
かさ歯車は回転軸に取り付けて使用する。その取付法は歯車と回転軸に見合った穴の加工を行わなければならない。図6に参考を示す。
図6.取付に必要な固定寸法