(2)ファラデーの法則
電気めっきにおいて、ファラデーの法則ほど重要で、計算の基礎に用いられているものはありません。この法則は、次の2項からできています。
|
ファラデーは、この法則を1834年に発見しました。彼は、1アンペア1秒間の電気量を1クーロンとし、各原子または基の1化学当量を生成するに要する電気量を96,540クーロンであるとし、この電気量を1ファラデーと名付けました。
化学当量とは、めっき金属の原子量を、めっき浴中の金属イオンの価数で除したもので、光沢ニッケルめっき・ワット浴の場合には、58.71/2=29.36(g)になります。すなわち、このニッケルめっきにおいては、1ファラデーの電気量で29.36gのニッケルが析出することになります。
計算例1
硝酸銀溶液(AgNO3)を1アンペア、1時間電解するといくらの銀が析出するか。
AgNO3 → Ag+ + NO3-
Agは1価で、原子量は107.88であるから、析出量は
(107.88×60秒×60分)/(96,540×1価)=4.023g
計算例2
硫酸ニッケル溶液(NiSO4)を1アンペア、1時間電解すると、いくらのニッケルが陰極に析出するか。
NiSO4 → Ni2+ + SO42-
Niは2価で、原子量は58.71であるから、析出量は
(58.71×60秒×60分)/(96,540×2)=1.095g
これをめっき厚さで表すと、ニッケルの比重は8.9g/cm3であるから、1dm2当りの厚さは、
1.095(g/1010μm2)/8.9(g/1012μm3)
=0.123×102(μm/Ah・dm2)
=12.30(μm/Ah・dm2)
これを、1分間(AM)当りに直すと
12.3/60=0.205(μm/AM・dm2)となります。