めっき皮膜の膜厚管理
めっき皮膜の品質管理のなかで、最も重視されるのは、皮膜厚さの管理です。10μmの亜鉛めっきを発注したのに、納入された製品の膜厚は8μmくらいしかなかったなど、昔から今日に至るまで、この種のトラブルはなくなってはいません。そこで、皮膜厚さの管理はどのように行われるか、をみてみましょう。
めっきの原理
(1)電気めっきの原理
一般に電気めっきは、【図1】に示すように、めっきされる製品を陰極としてめっき浴中に浸し、陽極には、めっきする金属(例えば、ニッケルめっきでは、ニッケル金属)を用いて直流を印加して行います。このとき両極では、次のような反応が起きています。 |
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すなわち、陰極では浴中の金属イオンMn+(nは金属イオンの価数、ニッケルめっきではn=2)がn個の電子(e)を得て金属になり、製品表面に析出します。一方陽極では、陽極金属がn個の電子を放出して浴中に溶解して、金属イオン(Mn+)になります。
めっき槽に通電を続けますと、このような反応が連続して起り、めっき皮膜の厚さは次第に増加します。所望の厚さが得られた段階でめっき作業を終了することになります。
ここで重要なことは、めっき皮膜を形成するエネルギーは、金属イオンの還元に使用された「直流電力」であるということです。
直流電力は、電流(アンペア)×時間(分)で表わされますので、めっき皮膜の厚さは、製品1個当り、電流とめっき時間に左右されることになります。大きな電流を流せば短時間に目標の膜厚が得られることになりますが、無制限という訳にはいきません。めっき浴の種類や製品の形状等によって制約があります。
電流の強さを決定するのに、通常は「電流密度」という概念を用います。これは製品の単位面積当りに流す電流の強さで、通常、A/dm2(1平方デシメータ100×100mm当りのアンペア)で表します。したがって、めっきされる製品の表面積を計算し、それに適用する電流密度を乗じた値が、製品1個に流す電流(A)ということになります。