表面処理工程内において、電力を有効に使うために次のような対策がとられています。
(1)浴組成と陰極電流効率
前回、低電流効率の例としてクロムめっきをご紹介しましたが、電流効率を高めるために浴組成を変更するという手段があります。【表1】に示すように、従来から使われてきたクロム酸と硫酸で構成されるサージェント浴よりも、クロム酸とケイフッ化物によるフッ化浴のほうが優れていることが分かります。しかし、すべてのクロムめっきが、フッ化浴に転換できるかというとそうではありません。析出したクロム皮膜の物性が異なることや、素地がめっき浴に腐食されることなどがあって、素地による制約などがあります。
【表1】浴組成と陰極電流効率(%)
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(2)めっき浴と浴電圧
【表2】に、各種亜鉛めっき浴の浴電圧を示します。表中ハルセルというのは、電気めっき液の試験方法の一つで、小規模のめっきを行って析出物を評価する方法です。ハルセル浴電圧は、工場の浴電圧とは大きな違いがありますが、±両極の距離が違うからです。
浴電圧は、省電力上大きな意味をもっています。例えばシアン浴8.0Vと塩化カリ浴2.8Vでは8.0−2.8=5.2Vの差があります。
亜鉛めっきでは大電流を流しますので、例えば10,000Aの場合、5.2V×10,000A×0.001=52KWの直流電力の差となり、これは交流電力としては凡そ52/0.8=65KW/hとなります。このようにめっき浴の変更によって省電力が可能です。
しかし亜鉛めっき浴の選択は、クロムめっきの場合と同様に、析出皮膜の物性やめっき浴の液性によって制約がありますので、浴電圧だけで決定するわけにはいきません。
【表2】亜鉛めっき浴と浴電圧(V)
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(3)めっき浴中の不純物と電流効率
サージェントクロムめっき浴中に不純物が多いと、陰極電流効率が低下することが【図1】で分かります。めっき液を常時ろ過することによって省電力が可能です。