通常、建材などアルミニウム合金のアルマイト処理は、次のプロセスで行われています。
このうち、陽極酸化(アルマイト)工程では、通常、硫酸電解浴中で、エッチングによって表面調整されたアルミニウムの表面が、電気化学的に溶解して、陽極で発生する酸素により酸化膜を形成させます。
電解時間の経過に伴って、陽極酸化皮膜は成長しますが、常時硫酸浴中に晒されるため、先に成長した皮膜は、化学的に溶解します。このため浴中のアルミニウムイオン濃度は、時間の経過とともに上昇します。
電解浴中のアルミニウムイオン濃度の上昇は、皮膜の物性等に悪い影響を与えますので、管理限界を定め、これ以下になるようにアルミニウムの除去が行われます。通常、次のような対策がとられています。
(1)硫酸アルミニウム晶析法による酸回収
この方法は、電解浴中で生成した硫酸アルミニウムを、結晶として分離しようとするものです。【図1】のフローシートに示すように、電解浴を蒸発槽に導き、硫酸濃度30〜50%まで濃縮して晶析槽に送り、硫酸アルミニウムを晶析させ、遠心分離機で固液分離し、硫酸アルミニウムの結晶を取り出します。これは硫酸礬土(ばんど)として凝集剤などとして販売されています。
分離した母液の硫酸は、硫酸アルミニウムの硫酸分が減少するので、濃度は低下します。それを新規硫酸で調整して、あるいは水で希釈して予備電解液とします。
(2)錯塩晶析法による酸回収
この方法は、基本的にはエッチング浴の錯体晶析法と同様です。晶析槽に加える錯体形成剤としては硫安、硫酸カリウム、硫酸鉄などの硫酸塩が使われ、アンモニウム明礬、カリ明礬などが生成されます。この場合にも遠心分離で固液分離されますが、明礬は市販され、母液は濃度調整の必要なく、電解液として再利用されています。