用語の定義
(1) クロメート皮膜
クロメート処理によって電気亜鉛めっきおよび電気カドミウムめっきに対して防食皮膜を生成すると同時に、光沢、淡黄色、黄色、緑色などを与える皮膜。
- 参考1.
- その色調は、皮膜の主成分であるクロム酸クロム(xCr2O3・yCrO3・zH2O)の組成割合と厚さによっていろいろと変化する。
- 参考2.
- 比較的薄いクロメート皮膜の場合、めっき上に残留した薄い透明皮膜の表面に光が当ったとき、皮膜の表面およびめっき表面での反射光が互いに干渉して虹色のしま模様を生じる。
- 参考3.
- クロメート皮膜は同一の部品ロット、個々の部品においても色調に差を生じ、また、同一表面上においても均一な色調は得難く、色むらを生じる。
(2) 白色腐食生成物
クロメート皮膜が破壊され、電気亜鉛めっきおよび電気カドミウムめっきが腐食環境にさらされるときに生じる塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸カドミウムなどの白色化合物。
等級・種類および記号
クロメート皮膜の等級・種類および記号は、下表のとおりとする。なお、記号の付け方は、JIS H 0404による。
等級 | 種類 | 等級・種類の記号 | 単位面積当たり皮膜質量 (g/m2) |
代表的色合い(参考) |
---|---|---|---|---|
1級 | 光沢 | CM1 A | 0.5以下 | 透明、時として青味 |
淡黄色 | CM1 B | 1.0以下 | わずかに干渉模様 | |
2級 | 黄色 | CM2 C | 0.5を超え 1.5以下 | 黄色干渉模様 |
緑色 | CM2 D | 1.5を超えるもの | オリーブ、グリーン、ブロンズ、褐色 |
備考
処理液の違いによって黒色クロメート皮膜が得られる。この皮膜の単位面積当たりの皮膜質量は、受渡当事者間の協定による。
クロメート皮膜の耐食性
クロメート皮膜の耐食性は、JIS H 8502に規定する中性塩水噴霧試験法によって行い、下表に適合しなければならない。なお、試験はクロメート処理後、24時間以上経過後に行う。
等級・種類の記号 | 白色腐食性生物が発生してはならない最低時間(h) |
---|---|
CM1 A | 6 |
CM1 B | 24 |
CM2 C | 72 |
CM2 D | 96 |
クロメート皮膜の呼び方
例1)Ep-Fe/Zn 25/CM2 D
鋼素地上、電気亜鉛めっき25μm以上、クロメート2級緑色皮膜
例2)Ep-Fe/Cd 8/CM1 A
鋼素地上、電気カドミウムめっき8μm以上、クロメート1級光沢皮膜
クロメート皮膜の質量測定方法(JIS H 8625(1993) 附属書1より)
適用範囲
電気亜鉛めっきおよび電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜の単位面積当たりの皮膜質量を測定する方法について規定する。
試験片
試験片は下表を満足するもので200g以下のものを使用する。この試験片はクロメート処理後少なくとも24時間以上経過したもので、14日以内のものであること。
単位面積当たり予想皮膜質量 (g/m2) |
試験片の最小全表面積 (cm2) |
---|---|
1未満 | 400 |
1以上10未満 | 200 |
10以上25未満 | 100 |
25以上50未満 | 50 |
50以上 | 25 |
試験溶液
皮膜の溶解に使用する試験溶液は、水にシアン化ナトリウム(JIS K 8447)50gと水酸化ナトリウム(JIS K 8576)5gとを溶解して1ℓの水溶液とする。
操作
試験片を乾燥する。試験片の質量を化学天びんで秤量する(精度 0.1mg)。次に試験片を、常温の試験溶液中で約1分間、15A/dm2で陰極電解を行い、クロメート皮膜を除去する。陽極には黒鉛などの不溶性の電極を用いる。皮膜はく離後1分間後に試験溶液から試験片を取出し、すぐに流水で洗浄し、その後純水で洗う。迅速に乾燥して再秤量する。質量(精度 0.1mg)が一定になるまでこの操作を繰り返す。試験片毎に、試験溶液は取り替えること。
計算
単位面積当たりの皮膜質量は次の式によって算出する。
mA={(m1-m2)/A} x 10
ここに、
- mA
- :単位面積あたりクロメート皮膜質量(g/m2)
- m1
- :クロメート処理された試験片の質量(mg)
- m2
- :皮膜を除去した後の試験片の質量(mg)
- A
- :クロメート処理された試験片の表面積(cm2)
同一試験を2~3回行った場合は、その平均値も併記すること。