(1)常時排水の沈降分離
排水処理の対象となる重金属としては、めっき浴中に溶解しているめっき金属や、めっきされる素材から酸などに溶解した金属などがあります。したがって常時排水にはこれらが含有されていることになります。
常時排水に含有される重金属イオンの処理は通常、酸またはアルカリによるpH調整により、不溶性の金属水酸化物を生成させて、沈降分離します。この場合、微細な水酸化物の沈殿のままでは沈降分離に多くの時間を必要としますので、これに凝集剤を添加して凝集させ、大きなフロックにして沈降時間を短縮します。この方法を凝集沈降分離といいます。
水酸化物の沈殿は沈降槽下部に沈降し、上澄水は、各地に適用されている放流規制pH(通常5.8〜8.6)に調節してから、下水道や公共水域に放流します。
金属イオンの溶解度が最も小さくなるpH領域を【図1】に示します。
このように最適pHは金属イオンによって異なりますので、含有する金属類の種類に合致したpH範囲で中和し凝集沈降させます。もし、規制値をクリアーするpH値が大幅に異なる金属を含有する場合には、別途に中和沈降処理を行う必要があります。
最近はこのような操作を避けるため、金・銀などの高価金属排水、ニッケル・銅などの有用金属排水は別の処理が行われます。例えば向流多段水洗の最終水をイオン交換塔を通して金属回収と水回収をしたり、減圧蒸留により金属と水の再利用を図るなどの対策がとられています。
沈降槽に沈殿した重金属水酸化物のスラッジは、定期的に(例えば5〜10分おきに)排泥ポンプでスラッジ濃縮槽に送られて濃縮され、フィルタープレスなどの脱水機にかけられ水分を除去し、産業廃棄物として処分されます。