前回、クロムめっき皮膜は六価クロムを全く含有しませんが、クロム酸を主成分としたクロメート皮膜には存在し、その量が多いほど耐食性が優れていることを紹介しました。
クロメート処理のように、化学的に皮膜を形成する処理法を化成処理、それによってできた皮膜を化成皮膜といっておりますが、従来はこれにもクロム酸が用いられました。
代表的なものとして、アルミニウム合金やマグネシウム合金の密着性を高めるための化成処理があります。この両金属は活性で、空気中で天然の酸化皮膜を形成するため、直接塗装すると極めて密着性が悪く塗膜が脱落してしまうからです。また大量に生産されている表面処理鋼鈑にも、めっき後の後処理として、クロメート処理が施されてきました。
これらに対する六価クロムフリー対策として、様々な対策が研究開発されてきました。その方向は二つに分かれます。
(1)三価クロムクロメート皮膜
六価クロムは規制されていますが、三価クロムは規制されていませんので、従来から使いなれたクロム化合物を使った三価クロメート処理液を使って化成皮膜を形成しようとするものです。現在の亜鉛めっき後のクロメート皮膜の主流になっています。あるメーカーの販売している商品の一例を【表1】に示しました。
【表1】六価クロムと三価クロム化成皮膜の比較
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(2)クロム以外の化合物
マグネシウムの工業材料としての登場は、携帯電話の爆発的普及によることが多く、その歴史は新しいのですが、アルミニウムは飲用缶(ビール、コーヒーなどの飲み物を入れる缶)や建築材料で、古くからクロムフリーの化成皮膜が普及していました。
クロムに代わる金属塩としては、チタンTi、ジルコニウムZr、マンガンMn、モリブデンMo、バナジウムV、コバルトCoなどいわゆる遷移金属や、セリウムCeなどの希土類元素が考えられています。
しかしこれらは、単独ではクロム酸系の耐食性に及ばないため、これらにタンニン酸などのキレート剤やコロイダルシリカや水溶性ポリマー、有機シラン化合物などをブレンドしたものが実用化されているようです。
表面処理関係の目標としては、最終的にはクロムフリーの達成でありますので、やがて三価クロメートは姿を消すことでしょう。