クランクプレス等の機械プレスでは、ストローク位置によって発生圧力が変化します。この点が、ストロークのどの位置でも圧力が変化しない油圧等の液圧プレスとの大きな違いです。【図1】はクランクプレスの圧力・ストローク曲線です。
スライドのストローク位置が下死点に近付くほど、発生圧力が高くなることを示しています。理論的には無限大の圧力が得られます。プレス機械の能力表示では下死点上の位置を決め、能力を表示します。これを「トルク能力」と呼びます。
プレス加工は、プレス機械の下死点上のある位置から加工が始まり、下死点で終了します。製品加工の開始点から完了までの間の加工力変化を示すものが「製品加工の圧力・ストローク曲線」です。【図2】は製品とプレス機械の圧力・ストローク曲線を重ねて表したものです。
製品加工曲線はAとBを示してあります。製品加工曲線Aは、プレス機械の曲線の内側にあります。このような状態にあれば、プレス加工に何の問題もないことを示しています。ところが、製品加工曲線Bは、プレス機械の曲線と交わっています。【図】に「能力オーバー」と示した部分が、プレス機械のトルク能力を超えていることを示しています。プレス機械のクランク軸等の運動伝達部分に異常が発生する可能性が高くなりますから、ワンランク上のプレス機械を使う必要があります。
実務上では、製品加工の圧力・ストローク曲線を知ることは難しいので、最大加工力で判断する加工となります。最大加工力は製品の加工開始から少し後に発生しますが、加工開始位置でのプレス機械の発生圧力が製品加工力より上回っていることを確認します。このようにすれば、能力にゆとりをもって仕事ができます。絞り加工の場合には加工開始点が上になることが多いので、特に注意が必要です。