打ち抜き(ブランク抜き)加工では、ブランク形状とブランクパンチ形状は同じ形にします。そのときにブランクパンチ寸法は、ブランク寸法よりクリアランス分小さくします。
※ | 参照 抜き加工のクリアランス ブランク加工(抜き加工のいろは その1) 打ち抜き型の構造1(金型構造のいろは その1) |
設計では、シンプルで作りやすい形にすることが基本です。ブランクパンチの大きさによっての変化を示します。
(1)大きなパンチの設計(【図1】参照)
大きなパンチでは、パンチ面積が大きいので、その内側にパンチを固定するためのねじ加工や、ダウエルピン(ノックピン)用の穴加工ができます。
そのイメージが【図1】(a)です。このような形は、ワイヤーカット放電加工で容易に作ることができます。
(b)が上型として組み立てられた標準的な形です。パンチプレートを省略して、パンチを直接パンチホルダに取り付けて、構造を簡略化しています。
円形等のシンプルな形では(c)のようにシャンクとパンチを一体化して、さらに簡略にして作ることもできます。ただし、第168回で説明したように、パンチとダイのクリアランス合わせの問題は残ります。
(2)中程度の大きさのパンチの設計(【図2】参照)
パンチ内に、ねじやノック穴加工が難しい大きさのパンチのイメージです。
円形等のシンプルな形状であればフランジを付け、フランジ部分にねじ加工やノック穴加工を行い、やはりパンチプレートを省略した構造に設計することができます。
複雑な形状の時にはシンプルな部分にフランジを付けて、同様な形に設計します。
このようなことが困難と判断したときに、パンチプレートを使ってパンチを固定することになります。パンチプレートは必然の部品ではないことを理解して下さい。
(3)小さなパンチの設計(【図3】参照)
製品形状が小さくなると、パンチも小さくなります。そうするとパンチ単体で上型に固定することが困難になり、プレートに埋め込んで固定する方法を採用します。このパンチ固定用のプレートがパンチプレートです。
(f)を参照して下さい。パンチはできるだけストレートになるようにします。パンチ面積の大きさとパンチ長さの関係から強度に問題があるときに段付きの設計にします。
パンチとパンチプレートの関係は、パンチプレート穴にパンチを軽く圧入(小さなプラスチックハンマー等で軽くたたいて入る程度)するように設計します。
このようにすることで、パンチの垂直と位置を作り出します。
かしめによるパンチの固定は垂直を保つことが難しいので、出来るだけ避けるようにします。
パンチプレート材質はS50CまたはSS400が標準です。厚さはパンチ長さの30%〜40%を目安とします。
(4)パンチ材質
パンチ材質はSKD11材を標準とします。熱処理硬さは60HRC程度を目安とします。
金型製作の主流はワイヤカット放電加工を活用しています。ワイヤカット特性がSKD11材はよいこと、および耐摩耗性にも優れていることからです。
SKD11材を基準として、加工数や製品の被加工材質などによってパンチ材質を変化させます。