絞り用の金型では、パンチ、ダイおよびしわ押さえが重要な部品です。ブランクからフランジの無い円筒形状を絞り加工するときには、【図1】に示すような絞り落とし構造の金型が使えます。加工する材料を位置決めプレートに置き、その材料をパンチによって絞った後、製品はダイを通過して下に落とします。金型構造も簡単で作りやすく、プレス作業効率のよい金型構造といえます。欠点としては底部が湾曲して平坦が出にくいことです。
円筒絞りでのしわ押さえは、絞り加工に伴うブランクの周方向への圧縮によって、材料が座くつしてしわが発生することを防ぐことが目的です。しわの発生はブランクの径で材料の板厚を割って求める値(%で示す。これを相対板厚という)によって、おおよその内容をつかむことができます。絞り率(m)が0.6程度で相対板厚が3以上ですと、しわ押さえなしでも絞れるようになります。金型の構造は【図2】に示すように、更に簡単な構造でもよくなります。
しわ押さえは、材料の座くつを押さえることが目的です。絞り加工する材料が移動でき、かつしわが発生しないすき間を作れば良いわけで、【図3】に示すような固定ストリッパを使った金型構造もあります。
この構造はスプリングを使った【図1】の構造に比べて作りやすくなっていますが、手作業によるプレス作業は行いにくいです。手作業で使うときに少量生産の簡易型のようなときに使われます。量産に使用するときには、プッシャーフィーダ(積み上げたブランクを往復運動する板状部品によって1枚づつ押出し、金型内に挿入して自動加工する送り装置)等を使って自動加工するときなどの構造に適しています。固定しわ押さえには以外と大きな力がかかるので、しわ押さえが薄いと反ってしまうことがあります。少し厚めに設計するようにします。
可動式のしわ押さえが一般的ですが、条件によっては無くてもよかったりします。短絡的に金型構造を決めるのではなく、加工条件やプレス作業の方法等もチェックして金型構造を決めるようにします。