前回の例を引き継いで解説します。
抜き加工力(P)の計算の結果は、8.928Tonで約9Tonでした。
抜き加工でパンチに食いついた材料を払い落とすことをストリッピング(かす取り)と呼びます。 ストリッピング力は抜き加工力の3〜5%です。平坦度を必要とする製品では10〜30%の力とします。
この例では、ストリッピング力を抜き加工力の10%として、ストリッパのスプリングを設計してみます。抜き加工力は約9Tonですから、ストリッピング力は900kgfです。
【図1】は、ストリップレイアウトに対応した金型のプレートサイズです。プレートの大きさから配置できるスプリングのサイズと本数は、径25で8本程度です。
【図2】は断面からのスプリング長さです。自由長で40mm程度が限界です。
スプリングの最大たわみを自由長の20%程度とすると、40×0.2=8(mm)となります。
スプリング本数を6または8本として、1本あたりの負担荷重を算出します。
6本の時 → 900/6=150(kgf)
8本の時 → 900/8=112.5(kgf)
板厚1.2mmを打ち抜くのに必要な可動量を3mmとすると、
40mm自由長の20%たわみ:8mm − 打ち抜き可動量:3mm =初期たわみ:5mm となります。
1本あたりの初期荷重と初期たわみ(5mm)からばね定数を算出すると、
150/5=30(kgf/mm)、112.5/5=22.5(kgf/mm)
となります。
径25、自由長40とばね定数30と22.5をもとにミスミカタログから適当なスプリングを探します。
極重荷重(SWB)の径25、長さ40 → ばね定数30.6kgf/mm
重荷重(SWH)の径25、長さ40 → ばね定数19.5kgf/mm
この2つが適当です。極重荷重(SWB)が寸法、ばね定数ではぴったりしているのですが、たわみ量8mmは規格の最大たわみに近く、スプリングの寿命から見ると問題です。
重荷重(SWH)はばね定数は少し低いですが、たわみ量にはゆとりがあり、スプリング寿命は長くなります。
普通、可動ストリッパ構造の金型では、ストリッパ面とパンチ端面には1mm程度の差をつけます。初期たわみにこの部分を見込むと、重荷重(SWH)のスプリングでも押さえ力は満足できることから、ここでは、
重荷重(SWH)径25、長さ40のスプリングを8本使用することにします。
この例では、金型プレートに入れることのできる最大径に決まりましたが、荷重にゆとりがあるときには、規格を選び、たわみにゆとりを持たせスプリング寿命を長くする。径を小さくしたり、スプリング本数を減らすなどの対応をします。