光電センサの不具合には、いくつかの典型的な症状パターンがあります。近い症状を選ぶと原因の候補を絞り込みやすくなります。当てはまらない・症状が複合している場合は、下の診断フローをご利用ください。
- まず確認:トラブル診断チェックリスト
- 1. 検知しない(未検知:軸ズレ・レンズ汚れ・距離・配線)
- 2. 誤検知・チャタリングする(外乱光・振動・クロストーク)
- 3. 透明体・光沢体が検知できない(受光・反射の不適合)
- 4. 水・油・粉塵・高温環境での故障(保護等級・冷却・ノイズ)
交換品・代替品をすぐ探す(仕様から絞り込み)
まず確認:トラブル診断チェックリスト
症状が特定できない場合は、以下の手順でステップバイステップに原因を絞り込みます。現場と設計で共通の手順として使えます。
- センサの電源・インジケータを確認する
電源ランプ(緑)が点灯しているか確認する。点灯しない場合は電源電圧・極性・断線を確認する。動作インジケータ(黄・橙)の状態でセンサの検知状態を確認する(配色は機種により異なる場合があります)。 - 投受光部のレンズを目視確認・清掃する
レンズ・投受光窓が汚れていないか目視確認する。汚れがある場合はアルコールを含ませた柔らかい布で拭き取る。清掃後に動作を再確認する。 - 受光量と余裕度を確認する
デジタル表示または受光量インジケータで現在の受光量を確認する。受光量が低下している(しきい値に対する余裕度が小さい)場合は光軸ズレ・汚れ・距離オーバーを疑う。 - 投受光軸のアライメントを再調整する(透過型・回帰反射型)
受光量が最大になる位置に投光器・受光器(またはリフレクタ)を微調整する。調整後、受光量が改善したか確認する。改善した場合は取り付けブラケットを確実に固定する。 - 外乱光の影響を確認する
センサ周辺の照明を消灯、または太陽光が入らない状態でセンサの動作を確認する。改善した場合は外乱光対策(遮光フード・センサ向き変更・変調周波数確認)を実施する。 - 配線のNPN/PNP・電圧を確認する
センサ銘板・カタログでNPN/PNP出力を確認し、PLCの入力モジュール仕様と一致しているか確認する。NPN出力は一般にプラスコモン入力、PNP出力はマイナスコモン入力と組み合わせる。入力回路図で確認する。テスターで配線の電圧・導通を確認する。 - センサタイプが検出対象・環境に適しているか確認する
検出対象の材質・色・透明度に適したセンサタイプか確認する(透明体→透明体検出用の専用光電センサ(回帰反射型など)、光沢体→偏光フィルタ付き回帰反射型、暗色体→透過型やレーザ型、感度余裕のある反射型など)。IP保護等級が使用環境(水・油・粉塵・温度)に合致しているか確認する。 - 隣接センサのクロストーク(干渉)を確認する
隣接センサを一時的に遮光した状態でトラブルが解消するか確認する。解消した場合はタイムシェアリング設定または設置位置・向きの変更を検討する。 - センサ自体の故障を確認する
上記すべてを確認しても改善しない場合、センサ本体の故障を疑う。同型の正常品と交換して動作が改善するか確認する。故障品はメーカーに修理・解析を依頼する。
※チェックリストは一般的な手順です。使用するセンサのメーカー・機種によって手順が異なる場合があります。詳細はメーカーの取扱説明書を参照してください。
1. 検知しない(未検知:軸ズレ・レンズ汚れ・距離・配線)
未検知は投受光軸のズレ・レンズ汚れ・検出距離オーバー・配線ミスの順に切り分けます。まず受光量インジケータで現在の受光量を確認してください。
原因1:投受光軸のズレ
透過型・回帰反射型センサは投光器と受光器(またはリフレクタ)の軸を精密に合わせる必要があります。機械振動・取り付けブラケットの緩み・経年による変形で軸がずれると受光量が低下し、検知しなくなります。
再アライメント手順:
- センサのインジケータ(受光量表示ランプ・デジタル表示)を確認しながら、受光量が最大になる位置に投光器または受光器を微調整する。
- 調整後、取り付けねじを確実に締め付ける(推奨トルクをカタログで確認)。
- 振動環境では緩み止めワッシャ・ねじゆるみ止め剤等を使用する。
- 調整後、ワークを通過させて正常な検知動作を確認する。
原因2:レンズ・投受光窓の汚れ
埃・油・水滴・切削液がレンズや投受光窓に付着すると光量が低下します。特に機械加工・切削・溶接・食品ライン(油・ソース)などでは汚れが蓄積しやすい環境です。
対策:
- 定期的にレンズをアルコールと柔らかい布で清掃する(研磨剤・シンナー不可。レンズ材質によっては使用可否が異なるため、メーカー取扱説明書を確認)。
- 飛散物が多い環境ではレンズ保護カバー(エアパージ付き)を設置する。
- エアパージは清浄なエア(ドライ・オイルフリー)を使用し、レンズ前面を常時エアでパージする。
- 頻繁に汚れる場合は、定期清掃の周期を設定してPM(予防保全)計画に組み込む。
原因3:検出距離オーバー
センサの定格検出距離を超えた位置にワークがある場合、受光量が不十分で検知できません。特に拡散反射型は検出対象の材質・色・表面状態で実効検出距離が変化します(黒色・暗色対象は検出距離が短くなる)。
対策:
- 実使用距離と実際のワークで検出テストを行い、十分な受光量があるか確認する。
- 検出距離が不足する場合は、より長距離対応の機種または透過型への変更を検討する。
- 高出力レーザ型センサを使用することで、暗色ワークの拡散反射型検出距離を延ばせる場合がある。
原因4:配線ミス(NPN/PNP逆接・電源電圧誤り)
NPN出力センサにPNP入力のPLCを接続した場合、または逆の場合は出力が正しく伝達されません。また電源電圧(12VDC/24VDC)の間違いもトラブルの原因となります。
チェック方法:
- センサのカタログ・銘板でNPN/PNP出力の種別を確認する。
- PLCの入力モジュールのカタログ・入力回路図で、プラスコモン入力(NPN出力と組み合わせる)かマイナスコモン入力(PNP出力と組み合わせる)かを確認する。
- テスターで配線の電圧・極性を確認する(茶:+V、青:0V、黒:出力が一般的だが機種によって異なる)。
- センサのインジケータ(動作表示ランプ)が点灯するか確認。点灯しない場合は電源供給を確認する。
上記を確認しても改善しない場合は、機種が検出対象・距離に合っていない可能性があります。
2. 誤検知・チャタリングする(外乱光・振動・クロストーク)
誤検知・チャタリングは外乱光・検出体の振動・隣接センサとの相互干渉が主因です。まず外乱光の影響から確認してください。
原因1:外乱光(太陽光・蛍光灯の点滅)
受光素子に強い外乱光が入ると、受光量が増加して「物体なし(入光)」の状態でも誤ってしきい値を超え、誤検知が発生します。蛍光灯は電源周波数の2倍(東日本50Hz電源で約100Hz、西日本60Hz電源で約120Hz)で点滅しており、この点滅を「ワーク通過」と誤認することがあります。
対策:
- 遮光カバー・フードの設置:センサ前面に遮光フードやシールドを設け、外乱光の入射角度を制限する。特に太陽光が窓越しに直接当たる場合は遮光板を設置する。
- 変調周波数の確認:投光変調周波数が外乱光の周波数と一致しないセンサを選択する。インバータ蛍光灯やLED照明の外乱光は、センサの変調周波数と干渉して誤検知の原因になる場合があるため、インバータ外乱光対策アルゴリズムを搭載した機種を選定する。
- センサの向きを変更:外乱光源(窓・蛍光灯)に正対しないようにセンサの向きを調整する。
- バンドパスフィルタ付き受光素子:一部の高機能センサは特定波長のみを受光するフィルタを内蔵しており、外乱光を効果的に遮断できる。
原因2:検出体の振動・バウンシング
ワークがコンベアや治具の上で振動している場合、センサのビームをワーク端部が繰り返し横切り、出力がON/OFFを繰り返します。
対策:
- 応答時間(タイマ)の設定:センサのONディレイ・OFFディレイタイマを設定し、短時間の遮光・入光変化を無視する。一般的に1~10ms程度のONディレイで振動による誤動作を防止できる。
- ワーク固定の見直し:治具・チャックによるワークの保持方法を見直し、振動振幅を検出ビーム径より小さくする。
- ヒステリシス幅の拡大:センサのヒステリシス設定が可能な機種では、ヒステリシス幅を大きめに設定してチャタリング耐性を高める。
原因3:隣接センサとの相互干渉(クロストーク)
複数の光電センサを近接配置した場合、隣のセンサの投光が自センサの受光部に入り誤検知が発生します(クロストーク)。特に透過型・回帰反射型で平行に設置した場合に起こりやすい問題です。
対策:
- タイムシェアリング(タイムシフト)設定:複数センサの投光タイミングをずらして(タイムシェアリング機能対応センサを使用)、同時投光による干渉を防止する。
- センサの向き変更:互いの光軸が交差しないようにセンサの角度・位置を変更する。
- 異なる変調周波数のセンサを使用:隣接するセンサに変調周波数が異なるモデルを組み合わせる。
- 物理的な遮光板の設置:センサ間に金属板などの遮光板を設置して干渉光を遮断する。
外乱光・干渉に強い機種への切替を検討してください。
3. 透明体・光沢体が検知できない(受光・反射の不適合)
透明体・光沢体が測れない原因はセンサ方式と対象の光学特性の不適合です。対象に合わせて以下のセンサへの切り替えを検討します。
対策1:透明体検出専用の回帰反射型センサへの変更(透明体向け)
透明フィルムやガラス、PETボトルなどの透明体は、光の大半が透過してしまうため、汎用的な拡散反射型では安定して検出できません。この場合、光の微小な減衰量を高精度に判別できる透明体検出専用の回帰反射型センサに変更します。この専用センサは、独自の光学系や信号処理回路を備えており、透明体がビームを通過した際のわずかな受光量低下を確実に捉えることができます。
対策2:偏光フィルタ付き回帰反射型センサの使用(光沢体向け)
光沢のあるワークや鏡面反射が発生しやすい対象では、通常の回帰反射型センサで誤検出が起こる場合があります。このような場合は、偏光フィルタ付き回帰反射型センサ(MSR機能付きなど)を使用することで、ワーク表面からの正反射光の影響を抑え、検出安定性を高められます。
対策3:超音波センサへの置き換え検討
上記でも検出が不安定な場合(無反射コーティングのガラス・液体表面など)は、超音波センサへの置き換えを検討します。超音波センサは音波を使うため、対象の色・透明度・光沢に依存しません。
ただし、応答速度は光電センサよりも遅く、高速搬送ラインには向きません。また、細かい穴・スリット・ネットなどの形状の対象は検出が難しい場合があります。
対象の光学特性に方式が合っていない可能性があります。
4. 水・油・粉塵・高温環境での故障(保護等級・冷却・ノイズ)
環境起因のトラブルは環境条件とセンサ仕様(IP等級・動作温度・耐ノイズ)の照合で防ぎます。症状が出てからの対処より選定段階の対策が確実です。
水・油・洗浄液の侵入
IP保護等級が不足していると、使用中に水・油・洗浄液がセンサ内部に侵入して短絡・腐食が発生します。
対策:
- 使用環境(水飛散・水浸漬・高圧洗浄)に応じて必要なIP等級のセンサを選定する(一般環境IP54~、水飛散:IPX4以上、一時的な水没:IP67、高圧洗浄:IP69/IP69K)。
- 既設センサのIP等級を確認し、不足している場合は保護ケース(ステンレスや樹脂製のカバー)を設置する、またはIP等級が高い機種に交換する。
- コネクタ・配線口のシールも確認し、必要に応じてシーリング材でシールする。
- IP保護等級に加えて、筐体、パッキン、ケーブル、コネクタの材質が使用環境に適合しているか確認します。高圧・高温水洗浄を行うラインではIP69/IP69K対応品が候補になりますが、薬液、洗剤、蒸気、切削液への耐性はIP等級だけでは判断できません。
粉塵・切粉の堆積
金属切粉・木粉・粉体が投受光部に堆積すると光量が低下します。
対策:
- センサを粉塵が堆積しにくい向き・位置に設置する(投受光部が下向きにならないよう配慮する)。
- エアパージノズルで常時清浄エアを吹き付け、粉塵の堆積を防止する。
- IP6X(粉塵完全遮断)規格のセンサを選定する。
- 清掃周期を設定してPM計画に組み込む。
高温環境
炉・乾燥機・溶接ライン周辺など高温環境では、センサが動作温度範囲を超えて誤動作・故障する場合があります。
対策:
- センサの動作温度範囲を確認し、使用環境温度がその範囲内であることを確認する。
- 高温が問題の場合は耐熱ファイバセンサを使用し、アンプ部を高温部から離して設置する。ファイバヘッドは300℃対応品もある。
- 放熱フィン付きブラケットや断熱材でセンサ周囲の温度を下げる。
- エアクーリング(冷却エア)をセンサ筐体に当てる。
強い電磁ノイズ
インバータ・大電流開閉器・溶接機などから発生する電磁ノイズが配線を経由してセンサの出力信号に重畳し、誤検知の原因になる場合があります。
対策:
- センサの信号線を動力線・インバータ出力線と分離してルーティングする(一般的には20~30cm以上の離隔が推奨されます(機器メーカーの配線ガイドラインで要確認))。
- シールドケーブルを使用し、シールドを適切に接地(グランド)する。
- センサへの電源線にノイズフィルタ(ラインフィルタ)を挿入する。
- PLCの入力モジュールに応答フィルタ(入力フィルタタイム)が設定できる場合は、適切な値(一般的に1~5ms程度)に設定してノイズによる短パルスを無視する。
環境対策後も故障が再発する場合は、使用環境に適した防汚・耐環境対応品への変更を検討してください。