ここで使う計測器は、長さや質量、温度などの物理量を測る測定機器と、表面粗さや光沢など工業量を測る測定機器を含みます。以下では、計測器に要求される基本性能と特性を解説します。
(1)測定器の適正な選択
測定対象物の加工公差(要求計測精度)と、それを測定する測定器の精度との比は次のようである。
・ | 望ましい選択基準 測定器の精度は加工公差の10倍の測定精度を持つもの(10:1) ■例 加工精度±0.01mmを保証するには、±0.001mmの測定器を用いて計測する |
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・ | 譲歩できる選択基準 測定器の精度は加工公差の5倍の測定精度を持つもの(5:1) |
(2)計測器の時間的不安定性について
計測器が時間の経過によって、どのように影響するかについて3つの概念(ドリフト、安定性、経年変化)があります(【図1】参照)。
・ | 「ドリフト」とは 一定の環境条件下で、測定量以外の影響によって生じる、計測器の表示のゆるやかで継続的なずれのこと→電気回路の温度上昇〜安定までの間の変動など |
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・ | 「安定性」とは 計測器またはその要素の特性が、時間の経過または影響量の変化に対して、どれほど変わらないかの度合いをいう |
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・ | 「経年変化」とは 長期の時間経過に伴って生じる計測器、またはその要素の特性の変化のこと |
(3)計測機能を持つLCA(ローコストオートメーション)の高精度化
計測機能を持つLCA(ローコストオートメーション)では、計測器の時間的な不安定性を回避し、高精度な計測機能を得るために、次のような工夫をしています。
・ | ドリフト対策 LCAの電源をONにした時点から、計測系やアクチュエータを含む制御系の温度が上昇するため、計測値の変動や機械の熱変形が生じる。安定化対策として、カレンダータイマーなどを設置して、ドリフトが安定する時間だけ、稼動時間の前に自動起動させるなど。 ■例 週末に稼動停止させ、月曜日から起動させる計測機能を持つ設備ではカレンダータイマーをもたせて、月曜日の稼動2時間前に自動的に電源ONにさせる。 *高精度な位置決め装置、テスター、加工機など |