第153回で、鉄系材料は「生む」と「鍛える」の2段階のプロセスで材料性質を制御できると解説しました(【下図】参照)。この回では「生む」プロセスでの材料組成と材料性質の基本的な関係を解説します。

図(鉄系材料の性質制御)

(1)炭素含有率と鉄系材料

 鉄系材料は、おおざっぱには鉄(Fe)と炭素(C)の合金といえます。この炭素(C)の含有比率で鉄系材料は3種類に分類され、それぞれ硬さその他の材料性質が異なってきます。

材料名称 鉄 鋼(炭素鋼) 鋳鉄
炭素の含有比率(%) 0~0.04 0.04~2.1 2.1~6.7

(2)含有元素の種類と作用の関係

 ここでは、鉄系材料に含有される代表的な元素とその作用効果について解説します。

含有元素 含有元素による作用効果例
炭素(C)
含有率0.1~1.5%程度の鋼の場合
* 鋼の硬さや強さ(引張り強さ、圧縮強さ)を生み出す元素
炭素:1%で引張り強さが約100kg/mm2増大する効果:次式

引張り強さ(kgf/mm2)≒20+100*C%
けい素(Si)
0.1~0.4%程度
* 硬さ、強さを増大させる効果がある。その効果はケイ素:1%で引張り強度が約10kg/mm2増大する程度
マンガン(Mn)
0.5~0.8%程度
* 焼き入れ効果と関係がある。高張力鋼にはマンガンを高い比率で含有させます。
* イオウと化合して脆性を防ぐ。
クロム(Cr)
* 焼入性を良くする。
* 高温硬さ、耐摩耗性を高める
モリブデン(Mo)
* 硬化層を深くする。
* 高温強さ、高温硬さを高める。
リン(P)
0.03%以下
* 冷間脆性を生じさせる有害元素
* 偏析の結晶異常に関係がある
イオウ(S)
0.03%以下
* 熱間脆性を生じさせる有害元素

 炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)の3元素は、材料性能を良いほうに作用させる元素ですが、リン(P)とイオウ(S)は材料を脆くさせるなど有害作用に繋がる不純物元素です。このリンとイオウの含有率が少ない鋼が良質といえます。代表的な機械構造用鋼材S45Cの組成は次表です。

記号 C(%) Si Mn P S
S45C 0.42~0.48 0.15~0.35 0.60~0.90 0.030以下 0.035以下

(JIS G4051-1979抜粋)

(3)合金鋼と組成

・ ばね鋼:C、Si、Mn、Crなどを含有
・ 高速度工具鋼:C、W、Cr、V、Moなどを含有
・ ステンレス鋼:C、Cr、Niなどを含有