引き続きコーヒーブレイクです。鉄は木材に較べて格段に強い材料として、現代では最も多用される構造材料です。しかし、木造建築しかなかった時代では、鉄が錆びる欠点を持つため木材の寿命を短くするとして、法隆寺などの古代建造物では多く使用されていません。それでも、和釘(ワクギ)として木材結合に採用されており、これも約1300年の間、その機能が維持されてきています。ここでは、古代建造物に使用されている鉄材料の話を紹介します。
現代の洋釘は25年程度しかもちません(錆が釘の内部まで伸展するため強度が極度に低下する)が、法隆寺に使用されている和釘(【写真1】)は、1300年経っても表面にしか錆が発生せず、したがって、表面層以外では鉄の強度が劣化していないため、1300年後の今日でも機能しています。
1300年間、釘の機能を維持している理由は、次の2つと言われています。
1. | 純度の高い鉄材料 | |
2. | 鍛造法でバウムクーヘン状の多層構造を形成 |
これは日本刀の特徴と似ています。日本刀の製法は、映画「ラストサムライ」に挿入されていましたが、赤熱した鋼(刃物に使われる鉄)を叩いて伸ばし、その伸ばした鋼を折り返し、これを何回も繰り返して、鋼を多層構造にします。この多層構造が、非常に硬いが折れにくく(したがって良く切れる)、錆びにくい日本刀の特徴を造りだします。
法隆寺の和釘も日本刀と同じ方法で造られているため、錆びにくい特徴を持っています。鍛造法で造られた和釘内部の多層構造のために、内部への錆の侵食速度が非常に遅くなり、したがって、1300年経っても釘の機能を維持できています。(参考:西岡常一著、木に学べ;小学館より)