LCA(ローコストオートメーション)をはじめ、建築構造物や輸送車輌などの全ての構造物が、多種の材料からなる部品で構成されています。「法隆寺の構造材料;木材(LCA:ローコストオートメーションを支える機素材料の基本-2)」と「法隆寺の構造材料;鉄(和釘用材料)(LCA:ローコストオートメーションを支える機素材料の基本-3)」では、法隆寺の重要な構造部材の木材と鉄材を例に、構造材料の組合せの重要性を説明しました。ここでは2種類の金属材料を事例に、材料選定と機能不備について解説します。
材料選定とトラブル事例
構造物の軽量化の狙いで、鉄系材料からアルミ系材料に構造部材を変更する場合があります。構造部材を変更する時には、鉄系材料とアルミ系材料の材料特性を理解して、周辺の採用技術を再度チェックする必要があります。
|
●ねじ部の引張り破断荷重と材料強度の関係は次式です。
- W
- =As・σ
- W
- :引張り破断荷重(kg)
- As
- :ねじ部の有効断面積(mm2)
- σ
- :ねじ部材料の引張り強度(kg/mm2)
●鉄系部材からアルミ系部材に変更する場合は、材料特性(引張り強度、硬さ)が異なるため、ねじ固定部のトラブルが予測されます。
■トラブル事例
1. | 同一寸法の設計にすると、アルミ部材のねじ部がせん断破壊されやすい | |
2. | ボルト座面部でアルミ部材がへたり、使用中にねじがゆるむ |
●これらのトラブルを予測して、対策を設計に盛込まなければなりません。
■対応策例
1. | アルミ部材を厚くして、ヘリサートなどを併用 植込みボルトのねじ深さ(t)と材料の関係は下記が参考<機械工学便覧より> a)鋳鋼鍛鋼・・植込みボルトのねじ深さ(t)=ボルト径(d) b)鋳鉄・・・・植込みボルトのねじ深さ(t)=1.3d c)アルミ材・・植込みボルトのねじ深さ(t)=1.8d |
|
2. | ボルトと座面の直角度の高精度化で偏当たりを回避 ・ワッシャの有効活用 ・締め付けトルク管理 |
新幹線「のぞみ」のボルト脱落事故も類似の要因が挙げられています。(「アルミ化したらボルトが抜けた?」日経ニューマテリアル、1992、10-5より)