
製造現場では、生産に必要となる原材料・部品・工具・装置などのさまざまな在庫を保有しています。
しかし、保有する在庫を正確に把握できていない場合には、過剰な仕入れによる廃棄ロスや欠品による生産ロスが発生しやすくなります。在庫の過不足や重複発注によるコストの損失を防ぐには、在庫管理を見える化して必要な量・タイミングで適正な仕入れを行える体制づくりが必要です。
この記事では、製造現場における直接材・間接材の在庫管理を見える化することで得られるメリットや実施時のポイントについて解説します。
在庫管理の見える化とは

在庫管理の見える化とは、在庫を仕入れてから各生産工程へ供給するまでの動きを一元的に管理して、リアルタイムに可視化することを意味します。見える化によって、在庫状況に関する詳細な情報を関係者が確認・共有できるようになります。
▼在庫管理で見える化する情報
- 在庫の保管場所
- 保管庫にある各在庫の数量・使用期限
- 在庫の入庫数・出庫数
- 在庫の仕入先・金額 など
また、製造現場で管理される在庫は、大きく直接材と間接材に分けられます。
直接材は、生産に直接使用される資材のことです。一方の間接材は、生産には直接使用されない備品や消耗品を指します。
▼製造業における直接材と間接材
区分 | 対象物 |
---|---|
直接材 | 原材料、材料、部品 など |
間接材 | 工具、装置、補助部材、消耗品 など |
直接材については製造現場の売上に直結するため、会社が主体となって徹底した在庫管理を行っていることが一般的です。間接材については各部門や個人単位で個別に調達しており、在庫管理方法が統一されていないケースも少なくありません。
なお、間接材の購買管理についてはこちらの記事で解説しています。
在庫管理の見える化はなぜ必要? 得られる3つのメリット
在庫管理を見える化できていないと、在庫の不足・余剰が発生しやすくなり、生産工程の遅延やコスト損失などの影響を及ぼす可能性があります。製造現場の生産性や利益の向上を目指すためには、在庫管理を見える化することが必要です。
見える化によって得られるメリットには、以下の3つが挙げられます。
①適正在庫の維持
自社が保有している正確な在庫数や入出庫の予定をリアルタイムで把握できるようになると、仕入れ数量を最適化して適正在庫を維持することが可能です。
適正在庫を維持できれば、在庫の欠品によって生じる生産ロスや販売機会の損失を防げます。また、過剰在庫を防ぐことで長期間の保管による品質の低下や、利用期限切れによる廃棄ロスの削減につながります。
②在庫コストの削減

在庫コストとは、在庫の保有によって発生するさまざまな費用のことです。例えば、在庫を保管する倉庫・設備の維持管理費用や、棚卸・廃棄の作業にかかる人件費などが該当します。
在庫管理の見える化によって保有する在庫数を適正に保つことで、保管スペースの縮小や管理業務の負担軽減につながり、在庫コストを削減できます。
なかでも間接材の発注を部門ごとに行っている場合は、重複発注や仕入れ価格のばらつきが発生しやすくなります。各品目の在庫情報や仕入れ管理を一元化することで、調達コストを削減できる可能性があります。
③発注・入出庫業務の効率化
在庫管理を見える化すると、生産部門・購買部門・倉庫部門といった関係部門間で在庫数や保管場所を共有できるようになります。仕入れのたびに倉庫部門に問い合わせたり、ピッキングの際に出荷商品を探し回ったりする必要がなくなるため、業務の効率化につながります。
また、発注内容や入出庫状況を共有する仕組みがあれば、特定の担当者がいなくても在庫情報を確認できるようになり、属人化を防ぐことも可能です。
在庫管理を見える化するポイント
製造現場では、さまざまな品目の直接材・間接材を調達して管理する必要があります。特に間接材については品目が多岐にわたるほか、各部門または個人の裁量で発注が行われることもあるため、管理業務が煩雑化・属人化しやすくなります。
不透明になりやすい間接材も含めて在庫管理を見える化するには、業務の標準化や在庫管理のデジタル化・自動化を図ることがポイントです。
①5Sの徹底
在庫管理を見える化する際の基本といえるのが、5Sの徹底です。5Sとは、「倉庫内のどこに何の在庫があるのか」誰が見ても分かりやすくするための考え方です。
以下の5つの頭文字を取って5Sと呼ばれています。
▼5Sを意識した在庫管理
5Sの内容 | 在庫管理での考え方 |
---|---|
整理 | 在庫の供給工程や種別に応じて保管方法・場所を分ける |
整頓 | ロットナンバーや利用期限などの基準で在庫の配置を整列させて見やすく・取り出しやすくする |
清掃 | 倉庫内の床や保管棚、保管設備などを定期的に清掃する |
清潔 | 在庫の品質を保持する保管環境を整備・維持する |
しつけ | 整理整頓された清潔な状態を維持するように習慣づける |
5Sを徹底して倉庫内の在庫を整理することで、棚卸や入庫後の保管、ピッキングなどの作業を効率的に行えるようになります。
②業務の標準化
在庫管理に関する業務を標準化する必要があります。
担当者によって仕入れや入出庫などの作業フローが異なる場合には、在庫の動きを関係者間で共有することが難しいほか、業務の属人化が発生しやすくなります。属人化を防いで在庫の動きを見える化するには、同じ方法・フローで仕入れや入出庫を行える体制を整えることが重要です。
▼業務を標準化するポイント
- 在庫管理に関する業務内容とフローを整理する
- 各業務の手順をまとめたマニュアルを作成する
- 部門間の情報共有方法を統一する
③在庫管理のデジタル化

在庫管理システムを導入して、紙媒体の管理表や表計算ソフトで行っていた在庫管理業務のデジタル化を図る方法があります。在庫管理システムとは、在庫の仕入れ情報やリアルタイムでの在庫数、入出庫の状況などをオンラインで一元管理できるシステムです。
▼在庫管理システムの基本的な機能
- 在庫の一覧表示
- 入出荷管理
- 仕入れ管理
- 棚卸管理
- 検品管理 など
生産部門・購買部門・倉庫部門において在庫情報をリアルタイムで共有できるため、情報共有のタイムラグで生じやすい実在庫数の差異を防止することが可能です。また、在庫情報の一元管理により、仕入れや棚卸、ピッキングなどの業務も効率化できます。
まとめ
この記事では、在庫管理について以下の内容を解説しました。
- 在庫管理における見える化の意味
- 見える化によって得られるメリット
- 間接材の在庫管理でよくある課題
- 在庫管理を見える化する方法
製造現場においては、直接材に加えてさまざまな品目の間接材を購買・管理する必要があり、在庫管理が煩雑化しやすくなります。適正在庫の維持や在庫コストの削減、業務の効率化を図るには、在庫管理を見える化することが重要です。