局部腐食は、全面腐食と並んで、腐食の形態を示す用語で、文字通り金属が局部的に侵食される腐食をいいます。その原因としては、(1)金属の組成や組織が不均一である。(2)腐食環境が不均一であることなどが考えられています。
金属が不均一の場合の代表例として、「異種金属接触腐食」があります。例えば鋼板に銅の小片を乗せて、腐食環境に置きますと、銅と接触している部分の鋼板に腐食が集中し、銅はほとんど腐食しないという局部腐食が起きます。
また、溶接した鋼を水中に浸漬しておくと、溶接部に腐食がおきます。これは、溶接によって、母材部分と溶接部分の化学成分や金属組織が違ってしまったことから起きる現象と考えられます。これも一種の異種金属接触腐食ですが、異種金属をとくに使用していないことから、「溶接部の選択腐食」とよんでいます。
環境の不均一による腐食の代表例は、護岸のために打ち込まれた鋼矢板などの喫水面の腐食に見ることができます。すなわち、喫水面は、満潮時には海水中に没しますが、干潮になると空気に暴露されます。この繰り返しによって、この部分はひどく腐食されますが、他の部分では、それほど腐食は進みません。これは、喫水面と他の部分では腐食環境が異なるのが原因と考えられます。水中では、溶存酸素濃度の差が、局部腐食を起こす原因となります。
局部腐食には孔があく場合もあります。孔の間口の割に深い局部腐食を「孔食」と呼んでいます。また、炭素鋼などでは孔食といわれるものよりも、間口が大きい割に深さの浅い、皿形とかすり鉢形の腐食が多く発生します。 また、ステンレス鋼などのように不動態化した金属表面を有する金属では、孔食を生じます。その理由は、次のように考えられます。 不動態化している金属表面には、不動態化皮膜と呼ばれる厚さ数ナノメータの目には見えないごく薄い皮膜が生成しており、この皮膜の防錆能力が大きいため、水中や大気中で腐食しないのが普通です。 ところが、この不動態皮膜にも弱点があり、塩素イオンが環境中に十分存在すると(例えば海水中)、所々でごく小さい部分の不動態皮膜が破れ、この部分と他の部分とが不均一状態になり、この部分の腐食が急速に進み、孔食になります。 |
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