金属洗浄工程
金属洗浄のプロセスは、被洗浄物の材質や大きさ、汚れの程度や洗浄目的などによって異なりますが、一般には大体、次のようなものであります。
(1)機械的前処理
重度な汚れである赤錆やミルスケール、大気中での熱処理のスケールなどは、従来は酸によるピックリングで除去されていましたが、環境保全の立場から、ショットブラストなど水を使わない汚れ除去方法が採用されています。
表面処理後の仕上がりにヘヤーライン、梨地、艶消しなどが要求されるものは、表面処理の前にあらかじめその下地をつくっておきます。各種番手のエメリーバフやワイヤーバフによるヘヤーライン、サンド、グリッド、ガラスピーズによる梨地がつくられます。
これらの処理はいずれも油系汚れを嫌いますので、油汚れのある製品は、それを事前に取り除くことが必要であります。
(2)アルカリ脱脂
先に述べましたように油系汚れを除去するために、アルカリ性の水溶液に、界面活性剤やキレート剤などを加えた溶液に浸漬して40〜60℃に加熱、液の流動、製品の振動・揺動などを行って処理します。
(3)酸洗浄
金属の加工によって生じた酸化膜など、比較的軽度の金属系汚れを除去するために10〜20%の塩酸や硫酸などの酸による洗浄を行います。過度の素地金属の溶解や、水素脆性を防ぐためにインヒビター(溶解抑制剤)を添加します。
(4)電解洗浄
酸性のものとアルカリ性のものがありますが、通常はアルカリ性の溶液が多いようです。浴組成は、アルカリ脱脂浴とそれほど変わりませんが、水の電気分解によって生じた水素と酸素によって汚れを素地から浮き上がらせたり、酸化還元作用によって洗浄しますので、精密洗浄が可能です。
製品を陽極にするか、陰極にするかによって、金属表面の反応が酸化反応か還元反応に選択できますので、汚れの状態や素地金属の種類によって選定します。また、その両方ができるように周期的に極性を変化できるPR電解やパルス電解なども採用されています。
(5)活性化浴
前処理の最終工程と次の表面処理がアルカリ性か酸性かによって中和処理を行います。例えば、アルカリ性の電解洗浄の後では、酸性浴による中和・活性化を行います。