今回は、鋼材以外の材料を含めて紹介します。
プリハードン鋼
プラスチック用の金型材料として開発された材料を、プレス用の金型に転用されたものです。JISには無く、メーカーブランドのものが使用されています。切削加工ができ、硬度がある程度ある材料です。40HRC程度に調質されているもので、析出硬化系(【※】参照)のものが使われています。
プリハードン鋼は、少量生産の抜き型や曲げ型のパンチ・ダイに使われることが多いです。量産型では、パンチプレートやバッキングプレートなどに使われます。切削加工ができて熱処理せずそのまま使用できる便利さが気に入られている材料です。
- ※
- 析出硬化
過飽和固溶体を適温に加熱するとき、ある組織成分が析出することによって起こる硬化。
フレームハード鋼
フレームハード鋼は、自動車部品等の抜き型、絞り型、曲げ型などの金型に使用されます。火炎焼入れにより簡単に表面硬化が得らる材料です。
通常、金型材は加工した後、所定の硬度に熱処理する(総焼入れ)必要がありますが、フレームハード鋼はこの工程が簡略化でき、総焼入れを必要とする鋼と比べ強度は落ちますが、金型製作時間を短縮できるため、特定用途に広く使用されています。
アルミニウム青銅
アルミニウム青銅は、銅ベースの合金です。高いプレス圧力に耐え、すぐれた耐摩耗性と耐かじり性を持っています。HZ合金(日立造船)、アンプコメタル(米国)などと呼ばれる材料です。SUS材やチタン等の難加工材の成形や、絞り加工用金型に使われることが多いです。
鋳鉄
鋳鉄は、ダイセットや中・大形の成形や絞りなどの金型に多く使われています。
4-1.ねずみ鋳鉄(JIS G5501)
普通鋳鉄とも呼ばれます。鋳造性に優れ、ダイセットやホルダーおよび中形部品のパンチ・ダイに多く使われています。
JIS記号はFCで、FC100から50飛びにFC350まであります。金型に使われているのは、FC200、FC250及びFC300です。
4-2.球状黒鉛鋳鉄(JIS G5502)
ダクタイル鋳鉄とも呼ばれます。ねずみ鋳鉄で強度が不足すると判断されるときに使用されます。
ねずみ鋳鉄では、炭素はフェライトまたはパーライト生地の中に片状に析出しています。それに対し、ダクタイル鋳鉄は、溶湯にマグネシウムなどを添加して析出する炭素を球状化させたものです。析出炭素を球状化することにより、スチール材に近い高強度を持ち、さらに延性、靭性、耐摩耗性などにも優れています。
JIS記号はFCDで、FCD350〜FCD800まであります。金型では、FCD450、FCD500及びFCD600あたりが多く使われています。