プレス加工で、最も多く利用されているクランクプレスでは、プレス機械の能力を表すひとつに圧力能力(加圧能力)があります。圧力能力とは、プレス機械が安全に発生しうる最大圧力です。クランクプレスでは【表1】に示すように、スライドのストローク位置によって発生圧力が変化します。そのため、圧力能力は下死点上の決められた位置での圧力を示します。【表1】の例では、下死点上5mmの位置で980KN(980キロニュートン=100Ton)の圧力が得られることを示しています。
プレス機械は、加圧力が働いても硬く変型しないものと思われがちですが、圧力能力の許容内であっても、【図1】に示すようにプレス機械のフレームやボルスタプレートは弾性変改します。圧力能力はフレーム等の変形があっても、圧力能力以内の荷重であれば安全を保証するものです。
圧力能力でいう加圧は、【図1】に示すようにボルスタプレート面積の定められた領域に、等分布に荷重が働くことを前提にしています。圧力能力の許容内であっても、狭い範囲に集中力を働かせることはよくありません。
金型寿命の面から見ると、最大圧力能力で仕事をすると、プレス機械のフレームやボルスタプレートの変形の影響を受け、金型寿命を短くします。金型寿命を考えたときには、圧力能力に対してゆとりを持った形で仕事をすることが必要です。一般的には圧力能力の60〜70%位までの圧力で仕事をすることが、金型寿命に対してはよいとされています。