抜き絞り型は、ブランク抜きと初絞りを組み合わせた複合金型です。
【図】(a)は上向き絞りの構造です。【図】では固定ストリッパ構造を示しましたが、ストリッパを上型に付ける可動ストリッパ構造もあります。加工のイメージは「加工内容」として示した図を参照して下さい。抜き絞りパンチ(複合部品:ブランク抜きのパンチと絞りのダイを兼ねる)でブランクを抜き、引き続きストロークの進行によって絞り加工を行います。絞られた製品は、ノックアウト機構によって上死点付近で上型より排出されます。
下型のノックアウトは、パンチに製品がつかないようにする目的としわ押さえがあります。ノックアウトへの力は、ダイクションによって与えます。
【図】(b)は下向き絞りの抜き絞り型です。スプリングスペースの関係から、あまり背の高い絞りには適していません。
浅い絞りの場合、下型のノックアウト、ばねを外し、ダイホルダーに製品通過用の穴をあけることで絞り落とし構造とすることができます。
抜き絞り構造の欠点はメンテナンスにあります。ブランク抜きの切れ刃部が痛んでバリがでると、メンテナンスの対象になります。痛んだ部分を再研削して、切れ刃を再生しますが、そのとき絞りダイのR部分も削っていますから、ダイRを再生しなければなりません。毎回のメンテナンスの都度、同じ形状のダイRに再生しないと絞りに変化が出て、絞り不良の原因となることがあります。また、構造が弱いので、プレス作業で加工ミスをするとすぐに金型破損をします。これも欠点でしょう。
この様な複合構造は欠点もありますが、工程短縮できることが魅力です。
上向き絞りの抜き絞り構造を使った場合であれば、ブランク抜き→絞り→穴抜きまでの複合加工は可能です。