穴抜き加工では、材料をダイの上に置き加工します。穴の抜きかすは【図1】に示すように下に落ちます。つまりダイを通過して下に落とされます。
ダイの上の材料はパンチで押され跳ね上がろうとします。材料を押さえていないと製品の平面度が悪くなる可能性があります。製品の平面度を確保するには、材料押さえをきかせながら加工することです。この条件を満たす金型構造が【図2】に示す可動ストリッパ構造です。
加工状態を説明しますと、次のようになります。
可動ストリッパ構造では、ダイ上の材料をストリッパで押さえ、固定してからパンチで穴抜き加工を行います。穴抜き加工時の加工力による変形を防止します。材料を貫通したパンチを材料から抜くとき(これをストリッピングと呼ぶ)に製品が変形することがありますが、可動ストリッパで押さえているのでその心配もありません。
可動ストリッパには2つの内容が求められます。材料押さえとストリッピングです。
ここで気になるのが、可動ストリッパにかけるスプリングの強さです。ストリッピングだけを考えるときには、穴抜き加工力の5%程度の力でOKです。材料押さえの力に関しては、強ければ強い程良いといえます。が、一般的には穴抜き加工力の30%位までの力に設定するのが多いです。
加工した製品はダイの上に残りますから、製品の回収は、作業者が作業工具等を使って取るか、圧縮空気で飛ばして取るかします。
細いパンチの場合、パンチの破損を防ぐ、パンチとダイとの関係をよくする目的から、可動ストリッパによってパンチの先端をガイドすることも行われます。このような形を「ストリッパによるパンチガイド」と呼びます。
可動ストリッパ構造の欠点は、材料押さえをすることで材料にキズをつけやすい点があります。外部からのゴミの進入やダイ面や、ストリッパ面の凹凸等に注意を払い作業をする必要があります。
参考に、穴抜き加工では製品の穴寸法と穴抜きパンチの寸法は同じにします。穴抜きのダイ穴はクリアランス分だけ大きく設定します。