金型は製品加工に必要なパンチ、ダイの動き以外にも、補助的な機構を必要とすることがあります。今回はスライダとその位置決めに関する内容を紹介します。
【図1】は、金型内の部品を上下運動させる機構の例です。スライダは一定位置で固定されなければなりません。その方法として、V溝とボールを用いた例です。V溝とボールは2点接触で固定されます。V溝をねじで直接押さえるより安定した位置決めを得ることができます。V溝を持ったスライダは穴の中にありますから、V溝の位置が分かりません。スライダには位置確認用の目印をつけて位置を識別できるように工夫します。調節ねじを外したときにボールが落ちて紛失しやすいのが欠点です。
【図2】は、ねじを利用したスライダの例です。調節ねじは軸方向(図の左右方向)に動かないように固定されています。ねじにはスライダが取り付けられています。ねじを1回転させるとスライダはねじの1ピッチ分移動します。スライダを移動させたい距離にあわせてねじを回します。ねじの回転方向でスライダの動く方向が変わります。小さなスペースで作れるスライド機構です。
【図3】は、移動量の小さいスライド距離でよい場合の方法です。スライダは円錐形のピボットを持ち、ピボットの円錐形状にあわせた先端形状を持つねじとセットで使います。これを2組使います。スライド距離はスライダに作られたピボットの半径以下です。【図3】(e)のねじ(ロ)をゆるめ、ねじ(イ)を締めることでスライダは移動します。