金型精度は、一般的には製品の寸法精度や形状精度を「物差し」として使っています。厳しい許容差を要求される製品、例えばICリードフレームやコネクターなどは高精度を必要とする製品で、それを加工する金型を高精度金型と認識しているように感じます。この点に異論をはさむ人はいないと思います。
ではこのような金型のどこが高精度なのでしょうか。製品はパンチ、ダイの形状が転写されるので、パンチ、ダイの形状をプロファイル研削加工(PG加工)やワイヤ放電加工(W/EDM)での多重カットなどの方法で、精度良く形状を作り使用していることからということなのでしょうか。たしかに、製品寸法許容差に対応したパンチ、ダイの形状の作り込みは、金型精度を判断する一つの要素といえます。
パンチ、ダイの形状の作り込みは、クリアランスを維持するために必要な場合もあります。製品の材料板厚が薄くなると抜きのクリアランスは比例して小さくなります。これを均一に維持することはかなりの難しさがあります。したがって、製品の形状寸法の許容差が大きくても、薄い板厚の加工では小さなクリアランスを維持する関係からパンチ、ダイの形状の作り込みと金型内への組立位置を高精度に保つ必要があります。製品の材料板厚も金型精度を見る「物差し」といえると思います。製品の形状精度についても、材料の板厚が薄くなるとわずかな当たりの変化で狂ってしまいます。やはり、パンチ、ダイ形状の作り込みが大切となります。
パンチ、ダイの形状の作り込みによって、部品として満足行くものが得られます。パンチ、ダイは上型と下型に配置されますから、上型と下型の関係精度を作るガイドポスト、ブッシュ(ガイド)も間接的に金型精度には重要な役割を持ってきます。パンチをストリッパでパンチガイドすることを考えれば、ストリッパ(インナーガイド)やストリッパボルト及びスプリング等の作りこみも関連してきます。
「物差し」とするものを明確にせず、金型精度を論じる傾向は無いでしょうか。例えば、インナーガイドはどうあるべきだといった内容です。求める精度によって、使う部品も組立方法も変わってきます。求める内容を明確にしないで作られた金型はそれらしく見えても、高精度金型とは言いにくいと思います。
前提を明確にすると分かりやすい。例えば、薄い材料を加工することを前提にして金型を考えると、クリアランスが小さい→パンチ・ダイの形状精度/面粗度→パンチ、ダイの位置精度→ガイドの作り込みといった連想で、金型のあるべき姿が浮かんできます。
金型精度はプレス加工する製品の加工数とは、関係なく製品から決まってくるといえるでしょう。