打抜き工具に必要な特性としては
耐摩耗性に優れていること・耐圧縮強さが大きいこと・耐衝撃性及び靱性が大きいこと・疲労強度が大きいこと等があげられます。
生産量や被加工材、潤滑など打抜き条件に応じて、打抜き工具材料を選択する必要があります。
工具鋼の特長
合 金 工具鋼 |
SKD11 | 12%Cr系のSKD11は耐摩耗性に優れ、焼入れ性が良いため変形が少なくなります。最も多く利用されています。 |
---|---|---|
SKD11(改) | 高温戻しでHRC60~63の硬さが得られ、靭性が高くなります。 | |
高速度 工具鋼 |
SKH51 | 高速度鋼の中で最も使用されている材料で、耐摩耗性、靭性に優れています。 |
粉 末 高速度 工具鋼 |
SKH40 | 粉末冶金法により、組織を均一に微細化し、従来にない高合金成分(W,V,Co等)を多く含んでいるため、靭性、耐摩耗性、疲労強度に優れています。 |
超硬 | V30 | スチールに比べ硬度が高く、耐摩耗性、耐圧縮性、剛性、耐熱性に優れているが、靭性が劣っているので選択を誤ると十分な性能を発揮できません。 |
打抜き工具の特性
合金元素の効果
成分 | 効果 |
---|---|
C | Cr,W,Mo,Vなどと炭化物を形成して耐摩耗性を得ます。Cが多いほど硬度が高くなります。 |
Cr | 耐摩耗性、耐食性、焼入性が増大します。 |
Mo,W | FeやCrとともにCと化合して硬い複炭化物を形成し、耐摩耗性、焼入硬化性や高温時硬度を高めます。 |
V | 耐摩耗性、靭性が増大します。 |
Co | 高温硬さ、焼戻し硬さが増大します。 |
Mn | 焼入性、靭性が良くなります。 |
打抜き工具の疲労強度(回転曲げ)
疲労強度は表面の仕上状態及び熱処理等によって大き
く値が変わりますので目安としてご使用ください。
打抜き工具の材料特性
項 目 | 材 質 | |||||
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合金工具鋼 | 高速度鋼 | 粉末ハイス鋼 | 超硬 | |||
SKD11 | SKD11(改) | SKH51 | SKH40 | V30 | ||
化 学 成 分 (%) |
C | 1.5 | 8%Cr系 ダイス鋼 |
0.85 | 1.3 | Co:12% 他:WC |
Cr | 12 | 4.15 | 4 | |||
Mo | - | 6.5 | 6 | |||
W | 1 | 5.3 | 5 | |||
V | 0.35 | 2.05 | 3 | |||
Co | - | - | 8 | |||
Mn | 0.45 | 0.35 | - | |||
焼入温度〔℃〕 | 1000~1050 | 1020~1040 | 1180~1220 | 1120~1190 | - | |
焼戻温度〔℃〕 | 150~200 | 520~550 | 550~570 | 560~580 | - | |
硬さ | HRC | 60~63 | 60~63 | 61~64 | 64~67 | 1200~1350HV |
抗折力 | N/mm2 | 3500 | 4500 | 4800 | 4500 | 2500 |
縦弾性係数 | N/mm2 | 210000 | 217000 | 219000 | 228600 | 540000 |
密度 | g/cm3 | 7.72 | 7.87 | 8.11 | 8.07 | 14.4 |
熱膨張係数 | ×10-6/℃ | 12.0 | 12.2 | 10.1 | 10.1 | 5.4 |
熱伝導率 | W/m・k | 29.3 | 23.7 | 20.6 | 23.8 | 72 |
(注)
- このデータは代表的な値を示したもので保証値ではありません。
- 粉末ハイス鋼SKH40はJIS G 4403:2000から規格されました。
(日立金属:HAP40、神戸製鋼所:KHA30、大同特殊鋼:DEX40、不二越:FAX38などが該当します。)