プラスチック射出成形金型のキャビティの耐食性は、鋼材によって左右されます。
成形材料から発生する腐食成分や空気中の水分によって鋼材の表面は酸化が促進され、腐食が進行します。
耐食性の評価は具体的な指標を得るのが難しいのですが、参考となる実験値が紹介されておりますので、これを目安とすることができます。
【表1】プラスチック射出成形金型キャビティ用鋼材の耐食性評価データ例(◎5%硫酸中での腐食進行テスト)
腐食減量(mg/cm2・h) | |
SUS630改 | 1.5 |
SUS420J2 | 2.5 |
SUS440C | 4 |
SKD11 | 6.5 |
SKD11改 | 7.5 |
P21(AISI) | 16.5 |
SCM440 | 22 |
- ※
- 出典:三谷景造「射出成形金型」P335、図15.3 シグマ出版
この試験結果によれば、SUS630改が特に優れた耐食性を示すことがわかります。
この鋼材は、析出硬化型ステンレス鋼で、0.07%C、4%Ni、17%Cr、4%Cu、0.15〜0.45Nb+Taの成分です。硬さは、35〜40HRCです。
切削性があまりよくないので、機械加工方法を研究しておく必要があります。
さらに耐食性を改善するためには、プラズマCVDコーティングや硬質クロムめっき皮膜等で表面を被覆することが有効です。
キャビティやコアの内部に複雑な冷却回路を構成している場合などは、耐食性の優れた鋼材を選定しないと、内部からの腐食で冷却効率が時間の経過と共に低下することが知られています。
金型の腐食に関しては、外側だけではなく、内側の機能についても注意をすることが肝要です。