プラスチック成形金型では、炭素鋼だけではなく様々な金属元素を合金した特殊鋼が使用されています。特殊鋼の選定の善し悪しによって金型の品質は大きく左右されます。ところで、一度製作されてしまった金型部品の鋼材の種類は、部品の来歴がはっきりしていない場合には判別が困難になってしまいます。特に、金型の補修や修繕をする場合には鋼種がわからないと困ることも多々あります。
そこで、鋼種の簡易鑑別法というのもがある程度経験的に確立されています。最も広く使われているのが火花試験法(spark test)です。火花試験は、サンプルをグラインダに接触させて発生する火花の色、形状、飛び方等で鋼種を判別する方法です。
グラインダの砥石に接触した鋼材は、摩擦熱によって高温に至ります、そして空気中の酸素と反応して瞬間的に燃焼を起こし、発火します。
発火の際には微量元素が影響して火の色や火花の分裂状態が変化します。
たとえば、炭素、珪素、マンガン、りん、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、コバルトなどの含有状態や含有量によって火花の種類は異なります。
火花試験法で活用できる内容には次のようなものがあります。
- 〇鋼種の鑑別
- 〇窒化の程度の鑑別
- 〇可鍛化の判定
- 〇スクラップの選別
- 〇異種鋼材の選別
- 〇リムド鋼の鑑別
- 〇脱炭の程度の鑑別
- 〇鋼材の高温酸化の状況の検査
- 〇焼き入れの有無の鑑別
素性が既にわかっている鋼種のサンプルを整備しておいて、試験しようとする試験片と火花の出方を比較できるようにしておいて、簡易的に比較検証をすることも行われます。
特殊鋼の成分によって火花の出方はある程度特定できるということを知っておけば、特殊な化学分析方法を採用するまでもなくおおよその判別が可能になります。