金属材料は、引張応力や曲げ応力を繰り返して受けることによって、ある繰り返し回数付近で疲労破壊を起こすことが知られています。
プラスチック射出成形金型のキャビティや金型部品もその例外ではなく、応力の繰り返しの累積によって疲労破壊に至る可能性を常に含んでいると考えるべきです。
ではどのぐらいの繰り返し回数によって疲労破壊は起きるのでしょうか?それを明らかにするためには、応力の振幅Sと疲労破壊するまでの繰り返し数Nの関係を示すS−N線図が必要になります。S−N線図は、たくさんの疲労破壊試験を経て作成される線図であり、代表的な一般鋼材については既知となっておりますが、金型に使用される特殊鋼ではS−N線図が正確に把握されているとは限りません。
そこで、そのような場合に目安となる疲れ限度を知るための簡易的な検討方法を紹介します。
- σy
- :材料の静的引張試験における降伏点(Paまたはkgf/mm2)
- σB
- :材料の静的引張試験における引張強さ(Paまたはkgf/mm2)
(1)回転曲げ疲れ限度 σwb(kgf/mm2)
■炭素鋼の場合
σwb=0.25(σy+σB)+5
■特殊鋼の場合
σwb=0.2(σy+σB)+10
(2)平面曲げ疲れ限度 σwp(kgf/mm2)
■両振りの場合
σwp=(0.8〜1)σwb
■片振りの場合
σwp=(1.6〜1.7)σwp
(3)引張圧縮疲れ限度 σwz(kgf/mm2)
■両振りの場合
σwz=(0.7〜0.9)σwb
■片振り引張りの場合
σuz=(1.6〜1.65)σwz
■圧縮片振りの場合
σ−uz=(2.55〜2.8)σwz