複層の滑り軸受は、裏金に層状に数層の材料を重ねて使用する構造である。図1は、 F.P.BOWDENが示したものである。
図1.摩擦によるせん断力と材質
すなわち、金属と金属が接触した場合の摩擦力(F)はこれらの接触面積(A)とせん断力(τ:タウ)との積に近似するものであるから図1の(イ)硬質材(軸受)対硬質材(軸)の場合は、A1が小さいがτ1が、大きいので結局摩擦係数が大きく、次の(ロ)軟質材(軸受)対硬質材(軸)の場合は反対にA2が大きくτ2が、小さいがこれもまた、摩擦力が大きくなる。一方、(ハ)硬質材の上に薄く軟質材をライニングしたものはA3およびτ3が、共に小さいので摩擦力は、小さくなる。このことは、ソリッドのものよりバイメタルが、優れていることを示すものである。
滑り軸受材料に接触部が球形状の負荷荷重が加わった場合、その接触部はヘルツの応力で計算可能である。図2に 直径10mmの鋼球に100(N)の荷重が加わり、平面の鋼材に接触した場合、0.15mmの円形形状の変形が発生する(両部材を弾性体と考えて算出)。
図2.ヘルツの応力による変形量
球形の硬質材が硬質材に加わった時の接触部の直径をAとした場合、この直径のサイズは相手材料の材質によって変化する。摩擦特性の良い軟質材を薄く硬質材の上に張り付けて、変形によるAを小さくする考えの元に作られたのが複層材である。
高荷重における耐摩耗性を得る目的で、強度と耐摩耗性を異なる材料で実現し、耐摩耗性材料を薄肉に加工し、上述した様に両部材を張り合わせて、両特性のメリットを引き出そうとしたのが、複層系の材料で、この複合材のポイントは、両材料が強固に結合している点である。この両部品の結合を工学的に安価に作り出す方法が、メーカーのノウハウである。メーカーから供給されている両材料に関する界面の説明によれば、両材料が、まじりあっているので、温度と圧力を加えて、拡散を用いた接合法により製造していると、想像できる。
複層材は機能とコストを両立させる目的で、層と外層の2層構造で成り立っており、内層には潤滑剤を含侵させた焼結法で製作した耐摩耗性材料、外層は高強度材料である鉄系を用いている。この複層材は厚みが数mmと薄肉の為、専有するスペースが少なく、装置の小型化に貢献する。また、軟質材料の軸受材もその厚みが薄く使用量が少なく、コストの低減にも貢献できる。ただし、2種類の材料の接合工数はコストがアップする要因となる。
参考とした資料
- 大阪大学工学部 田口長兵衛著 「最近の滑り軸受の動向と適用例(生産と技術1694-12号)」(社団法人 生産技術振興協会)
http://seisan.server-shared.com/16/1612-2.pdf
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