① インダストリー4.0は現場をどう変えるか?
過去の産業革命は、それぞれの時代の産業界で働く人々の仕事にどのような影響を与えたか?
それは人間の仕事の内容をドラスチィックに変化させて来た。
つまり第1次産業革命は「動力の置換え」、第2~3次産業革命は「定型業務の置換え」といえる。
この流れで、第4次産業革命、即ち、Cyber Physical Systemが普及した状況を想像すると、「時間・空間を超えた価値の接近性」と表現できるだろう。
21世紀初期のこの時期では、質量の伴わない情報データが Physical Systemを介して、即座に入手できるが、第4次産業革命の時代は、質量を伴う「モノ」がCyber Physical Systemを介してスピーディーに入手できる世界かもしれない。より専門的能力を有す者(プレーヤー:自ら判断して動く、周囲を操る)が活躍する時代になると予測されている。
インターネットの普及により、有り余る情報の中から価値ある情報を取捨選択できる能力が問われている現状から第4次産業革命の状況を想像すると、有り余るマガイモノでなく、価値あるモノを識別する選択力がユーザーには求められ、提供する側はそのための産業革命の萌芽期の競争状況にある。
② インダストリー4.0を迎える時代にどの様に係るか
先の第2回で、新しいテクノロジーが実用化されるまでの推移をモデル化したハイプサイクルを紹介した。図1のハイプサイクルから、音声認識などは実用化され生産の安定期にあることが分かる。自分の仕事に関連のある先進テクノロジーの状況は正確に把握できるが、その他の領域では、マスコミ等からの情報の影響が大きく、“熱せられ易く、冷めやすい”。
しかし、実用化に耐える新しいテクノロジーは、長期間にわたる緻密な準備を経なければ市場に受け入れられる先進テクノロジーとはならない。
したがって、自分のアンテナを張り、マスコミ情報に振り回されることなく自らの判断で、仕事を通じて世界に通用する専門能力を磨き上げることが、インダストリー4.0を迎える時代に一層必要となる。みずからリスクを取り挑戦することで道が拓ける。
図1 先進テクノロジーのハイプサイクル:2014年(矢印は筆者)
③ これからのキャリアデザイン/マイルストーンのヒント
上図のハイプサイクルの事例解説の参考文献1)の中では、デジタル・ビジネスのテクノロジー領域に関し、次の6つの歴史的な技術革新の発展ステージが提示されている。
- ステージ 1:
- アナログ
- ステージ 2:
- Web
- ステージ 3:
- E-Business
- ステージ 4:
- デジタル・マーケティング
- ステージ 5:
- デジタル・ビジネス
- ステージ 6:
- オートノマス (自律型)
ステージ1の「アナログの時代」は1950年代から発展し、デジタル技術に置き換えられつつも、先端領域ではキーテクノロジーの中に先端ノウハウとして活き続けている。
したがって、現状の強みを更に深耕・強化するか、変化の先端を追うか、または、その他の多様な戦略を選択するかは、各人の自己責任が前提となるが、長期間にわたりぶれない選択基準でキャリア・デザイン/マイルストーンを考えることが好ましい。
同時に、グローバルな潮流と調和するマクロなキャリアデザインの方向性を選択し、その上で、自分の業務に関連を持つ具体的なテーマを短期のマイルストーンに設定することで、長期間ぶれることなく同一領域のテーマを追究することが可能となる。
グローバルな潮流に調和し、ローカルな実態を確認して思考を具体化する
例えば、先の事例のデジタル・ビジネスの分野を対象とした場合、デジタル・ビジネスをグローバル潮流として選択し、ローカルな具体的テーマとしてアナログ・テクノロジーを設定、この中で現状業務の到達目標を短期マイルストーンと設定すると、具体的目標とマイルストーンとキャリアデザインの関係が一致することとなる。
一例として、今後一層の成長が期待される自動車や航空・宇宙関連産業、医療・福祉関連産業の分野では、高度センシング技術をベースにAI(人工知能)等を利用したHMI(Human Machine Interface:例えば自動運転、衝突回避制御、手術支援システム、他)の実用化が開発の最前線でしのぎを削る争いを展開しているが、この分野のキーテクノロジーの一つが、低価格超小型化が可能で技術のブラックボックス化が容易なアナログ・テクノロジーであり、デジタル・ビジネス分野の奥の奥に、差別化のキーテクノロジーとしてアナログ・テクノロジーが生き残っている。
参考文献
- 1. ガートナー2014、ガートナージャパン(株)、2014、9月