(1)かたより誤差の要因の詳細解説
ここでは実際の計測機器を事例として「かたより誤差」の要因と対策の理解度向上を図る。
- 温度ドリフトによる「かたより誤差」の変動要因をa)計測機器の温度安定化とb)自動化機器の機構系の熱変形2つに大別した。
- a)
- 計測機器の温度ドリフト
- b)
- 自動化機器の熱変形
- 以下ではa)計測機器の温度ドリフトについて解説する。
- 位置決め用計測機器は、「計測センサー」+「計測用回路」+「計測センサー保持機構」の3つの構成要素から成り立っており、それぞれ特有の計測時間に対する精度変動の特徴を持つ。図1の万能試験機を例とすると、「計測センサー」=荷重センサー、「計測用回路」=荷重センサーの計測装置、「計測センサー保持機構」=門型機構となる。
- 「計測センサー」自体は、周辺環境の変動に鈍感な構造に作られている(カバー保護、素材選定など)が、レーザー光やピエゾ素子などの複合構造材を利用したセンサーは温度ドリフトを生じやすい。
- 「計測用回路」は、電源ON後に内部の回路基板類が一定温度まで上昇するため回路基板を構成する多くの電子部品の温度ドリフトを避けることができない。したがって、一定温度に達して後に計測を始める取扱いが必要となる。この一定温度に達するまでの時間を「ウォーミングアップ時間」と呼ぶ。計測機器の場合は、通常の「ウォーミングアップ時間」は10分程度である。
- 「計測センサー保持機構」は、機構部品としての温度変形の影響をこうむる。図1の万能試験機の場合でも精密な計測を要する試験場では恒温室内に設置している。
- 「計測用回路」の温度ドリフトとその対策としての「ウォーミングアップ時間」の関係を図2に示した。図2の直線は理想的な計測データを示す。初期に曲線特性を持つデータが温度ドリフトを持つ場合である。この曲線の「ウォーミングアップ時間」を過ぎた時間点から計測を開始することで、温度ドリフトの影響を回避することができる。