重力は搬送機構の摩擦力やワークの粘性抵抗などが無視できる場合は、等速運動用駆動源として利用できます。この駆動源は、自然法則を利用するため、まさしく「理にかなった工法」といえます。ここでは、小型の丸型蛍光灯用ガラス細管の曲げ加工への応用を事例として紹介します。
(1)事例解説
小型の丸型蛍光灯は装飾用が主な市場のため、小ロットで短納期の製品です。したがって、大掛かりな加工装置を準備するには、色々なムダが生じます。
一般的には、ガラス細管の曲げは次の工程で製作します。ガラス細管を狙いの曲率Rに曲げるには熟練を要します。
この工程を重力を搬送の駆動源として使用した簡易ガラス細管曲げ加工治具(【図1】)で実現しています。
ここでは、加熱ヒーターで軟化させたガラス細管は、重りの重力加速度gで等速に引き伸ばされながらR形状に曲げられ、近接スイッチのセンサーにより、重りの移動を停止させて曲げ角度を制御します。曲率中心を中心にして、一定トルクを与えて順次曲げてゆくことにより、自然に正しい曲率のRが加工できます。
このLCA(ローコストオートメーション)の特徴は、最小限の加熱で無理なく加工できるので、ガラスへの歪みの残りが少なく、また蛍光体の劣化も小さくできることから、焼鈍工程が削減できています。
この事例のように、「理にかなった工法」を構想段階で選択し、それを実現させるために知恵を絞ることがなるほどといわせるLCA実現の発想法です。