2007年問題と称して「団塊の世代」の大量退職に伴う技術技能の伝承の欠落を危惧する問題提起が在ります。また、部品設計の些細な間違いやメンテナンスミスが重大な事故につながるリスクの大きい大規模な装置(原子力発電所など)やシステムにおいて、部品設計ミスの原因が設計技術の基本を教育されていなかった、などの原因解明の結果が報じられます。
しかし、21世紀の日本のモノづくりを実現してゆくこれからのエンジニアの方々には、過去の化石化した技術や技能に不必要に拘束されることなく、真の「モノづくり大国」の実現にふさわしい質的な向上心を欲します。
受け継ぐべきものは、真髄のみ(すなわちDNAとも称される思想)とも極論できます。このDNAを核として各人が咀嚼し、その上に新たな独創的コンセプトを創案し設計、構造として図面化することで人(エンジニア)に感動が生まれると思います。
革新的な装置設計を現物の装置に作り上げるには、今までにない部品加工や高精度な組立調整が必要になり、この場面で、高度技能が技術をカバーし、世の中に無かった装置を生み出します。技術と技能の進歩は、新たな創造の場で車の両輪の関係のように進化するものです。
"The World Is Flat." というグローバル社会の解説書が昨年話題になりました。IT技術が地球の距離と時間の差をなくし、質的な競争時代になることが提唱されています。
質的競争では、「思想の次元」で競争の土俵が決まります。過去の化石化した技術・技能領域を選べばBRICSとの量的競争に繋がり、独創的コンセプトの世界の競争では未踏領域の苦しみが新たな創造に繋がる、それぞれ異なる感動が得られると思います。