ユキ技研株式会社 レコフレーム事業部
代表者 代表取締役 高木康之
資本金 2000万円
設立 1984年9月
従業員数 47名
取材地 レコフレーム事業部
(愛知県名古屋市守山区花咲台2丁目108)
レコフレームとは
独自開発の締結部品「Tロック」とテーパーボルトの2種類の部品だけで組み立て可能なアルミフレーム。高剛性のフレームを誰でも高精度に短時間で組み立てられ、完成後も緩みや歪みが発生しにくいなどのメリットがある。
まずはレコフレームについて教えてください。
レコフレームは、ユキ技研で製造販売している構造用アルミフレームシステムです。最大の特長は、独自開発した締結部品「Tロック」を使った「Tロック結合」。基本的には「Tロック」とテーパーボルトの2種類の部品だけで組み立てが可能で、それもフレームの溝にTロックを挿入してテーパーボルトを締めるだけで高い剛性が得られます。
簡単組み立てで高剛性という特長に加え、
拡張性の高さも人気だ。
この連結方式のメリットとしては、誰でもまっすぐ高精度に、高剛性のフレームを短時間で組み立てられ、完成後も緩みや歪みが発生しにくいなどの点が挙げられます。また、L字ブラケットを使わずに連結するので溝もコーナーもすべてオープンになっており、外に一切締結部品が出ないので美しい外観を保つこともできます。
一方で、現合の現場には弱いというデメリットもあります。それは締結用の穴をあらかじめ開けておく必要があるためで、お客様には事前にきっちり設計してからご発注いただくようお願いしています。「事前の設計が必要」という点さえクリアできれば、アルミフレームの高剛性化と組み立て時間の大幅短縮を同時に実現できるため、一度採用いただいたお客様からは「もう元のフレームには戻れない」という声をいただいています。
アプリケーションとしては、装置のカバー、パーテーションや安全柵などの外観部品だけでなく、剛性が必要な装置の架台や構造部品でも採用が広がっています。最近では半導体関連設備の架台や実験設備での採用が増えており、特に製缶品の置き換えニーズが高まっていると感じています。製缶品の置き換えとしては、アルミになる分材料費は上がりますが、誰でも簡単に組み立てられ、組み立て時間短縮のメリットがあるので、製缶職人分の技術料と比較すると大きくコストダウンしていただけているようです。
どのように開発したのですか?
アルミフレームの締結部品に課題を感じて
独自開発した高木社長
当社はもともと自動機や検査機を設計製作する装置メーカーです。レコフレームの開発に取り組んだ1990年代は自動機や検査機の構造部品としてドイツ製のアルミフレームを使っていまして、その優れた構造や使いやすさ、バリエーションの多さに驚きつつ、アルミプロファイルの可能性を徹底的に追及する開発思想に感激していました。
一方で、締結にはもっと改善の余地があると思いました。そこで「もう少し何とかならないだろうか?」とずっと考えていたのはエンジニアの性でしょうね(笑)。アルミフレームの最も重要な要素は結合手段であり、もっと優れた結合手段があるはずだということで、「シンプルで強度があり、内部で結合できること」をテーマに決めて構想・開発をスタートしました。
開発当初の方針として、「試作は一切しない」ということを決めていました。アルミフレームという製品の特性上、試作するには金型を起こして成型する必要があります。それにはかなり費用がかかり、当時の私たちには負担が大きすぎましたので、とにかく机上で計算を尽くすことにしました。初品はぶっつけ本番で製造したのですが、机上の計算を尽くしたおかげで設計通りの製品が出来上がり、発売に至ることができました。
現場のこだわり
開発ではフレーム断面形状を徹底追求して強度を確保。断面とTロックによる緩まない締結、そして自社設計の加工機による高精度加工で、独自の高剛性アルミフレームを実現した。
製品開発や設計段階でこだわっていることはありますか?
開発・製造責任者の原田ゼネラルマネー
ジャー
レコフレームの開発当初から、机上の計算をしっかりすることは継続しています。ただし、当時はぶっつけ本番で生産に入っていましたが、今は3Dプリンタで試作して、断面形状や強度などをある程度確認してから生産に入るようになりました。
また、レコフレームは「装置の架台が作れるクオリティ」ということで売っていますので、フレームのデザインについても競合に対してアドバンテージが取れるように考えています。フレームの肉厚を厚めに設計して強度を確保しているほか、断面の形状にもこだわりがあります。よくあるX形状の断面は横からの力でたわみ始めると一気につぶれやすいのですが、レコフレームはコア部分を大きく確保しており、たわみに対して変形しにくい 断面設計にしています。このオリジナルの断面とTロックによる緩まない締結、さらに寸法通りぴったり切断して納品することで、レコフレームにしかない高剛性を実現しています。
では製造現場でこだわっていることは?
専用機の架台もレコフレーム製。
M16×P2.0最大深さ90mmの重切削にも
耐えられる剛性がある。
製造現場のこだわりといえば、加工機械をすべて自社で設計製作している点です。レコフレームは当社のオリジナル製品ですから、これにぴったり合った加工機など世の中に存在しません。当社はもともと装置メーカーで、現在も検査装置事業では撮像検査装置や画像処理装置などを製造していますので、そのノウハウを活かして設計、制御、ソフト、治具まですべて内製しています。
特に、レコフレームの「高剛性」「誰でもピシッと組み立てられる」というメリットを活かすためには、いかに正確な寸法で効率良く切るか、という点が大切になります。そこで受注データを直接加工機に取り込み、歩留まりの良い材料取りを自動計算して加工するようにしました。現場スタッフが行うのは、材料のセット、取り出しなどのハンドリングだけです。
ユキ技研の進化
2018年9月に稼働開始する新工場のために改良した専用加工機を投入し、増産と最長6mまでの対応を実現。今後は用途に応じた新製品もラインアップに登場する。
製造設備も進化していると伺いましたが?
はい、加工機も少しずつ進化してきています。初号機・2号機は切断するだけでしたが、3号機にはスピンドルを付けて、切断と穴開けを1工程でできるように改良しました。4号機では切断と穴あけ加工を分け、加工内容によって、使い分けができます。同時に穴開け工程にはオリジナルのツールチェンジャーを付けて、テーパーボルト用の穴開けだけでなく、アジャスタボルト用深さ90mmのタップ加工や95mmの下穴などにも対応できるようにしました。 2018年9月に稼働開始を予定している5号機、6号機には、切断機に再びスピンドルユニットを搭載して、かつ生産スピードをアップしました。また、これまでは最大で定尺5m材までだったのですが、2019年より6m材まで対応できるようになります。大型設備のお客様にもより採用いただきやすくなったと思います。
私たちは小さな会社で資金も営業力もなく、アルミフレームメーカーとしては先行他社よりも不利な部分もありましたが、製造工程を妥協せず自分たちで作ることで規模が小さいというデメリットをカバーして、先行各社とも勝負できていると感じています。
これからレコフレームをどのように進化させていきますか?
名古屋市守山区の新工場は、2018年9月に
稼働開始予定。
現在、当社の機械事業とレコフレーム事業の割合はほぼ半々ですが、これからはレコフレームのビジネスを大きく伸ばしていきたいと考えています。その一環として、レコフレームの生産を主に行う新工場を建設中で、2018年9月の完成を予定しています。ここでは前述の5号機・6号機が稼働しますので、生産量、最大寸法、納期などの面でよりお客様のお役に立てるのではないかと思います。
また、レコフレームの特長のひとつとして、事前にきっちり設計して締結のための穴を開けておく必要がありますので、設計段階でいかにお客様の手間を減らせるか、ということも考えています。具体的にはレコフレーム専用の3D設計ソフトを開発していまして、ソフト上で必要な情報を入力いただければフレームが構成できて、部品リストが出てくるイメージです。その際、締結要素が欠けている場合はアラームを出すなどして、手配ミスや手戻りを減らす仕組みに仕上げたい。このソフトをなるべく早く、お客様にお届けしたいと思っています。
製品面での進化としては、Tロックの材質も、発売当初は押し出し材から始まって長らく亜鉛ダイカスト製でやってきましたが、現在は単体での引っ張り強度が2倍以上でより耐久性の高いS45C製「鉄Tロック」を販売しています。アクセサリーパーツのラインアップも増えてきましたし、今後は新製品として、安全柵向けの20角の細いフレーム、架台向けの60角のフレーム、角Rのフレームを投入予定です。
また、クリーンブースや喫煙ブースなど、お客様からご要望の多い用途についてはユニットでの販売も開始しました。今後もお客様のニーズに合わせて柔軟に変化し、シェアを少しずつ拡大して、将来はアルミフレームのことを「レコフレーム」と呼んでもらえるようになりたいですね。
ユキ技研の地域貢献
「なごや・サイエンス・ひろば」の「レコ
フレーム体験コーナー」は、毎年行列がで
きるほどの大盛況。
当社レコフレーム事業部の近くにある公共施設「なごやサイエンスパーク」では、毎年夏休みに子供向けの科学を楽しむイベント「なごや・サイエンス・ひろば(※)」が行われています。当社も地域の一員としてイベントに協賛しておりまして、会場で「レコフレーム体験コーナー」を開催しています。
ここでは子供たちに自由な発想でレコフレームを組み立ててもらい、最後に作品を集めてコンテストを行います。優秀作品には賞状とレコフレームキットをプレゼントしていますが、これが例年、サイエンスショーに次ぐ人気企画になっています。
2017年の優秀作品「ムック(イヌ)」。
足先やしっぽの細かな表現、首輪のアイデ
アが素晴らしい。
子供たちからは、私たちが思いもつかない新しいアイデアの作品が飛び出してくるので、それを見る楽しさもありますし、ねじで締める、しっかり止まるという組み立ての楽しさを子供たちに体験してもらえるうれしさもあります。何より小さいころからものづくりに触れてもらう場を提供できる貴重な機会ですので、今後も続けていきたいですね。
※なごや・サイエンス・ひろば
2018年は8月4日に開催
>詳しくはこちら
\ ユキ技研からミスミのお客様へ /
レコフレームは、誰でも簡単に、高精度・高剛性のフレームを組み立てることができるアルミフレームです。Tロックの組み立ての簡単さは、使っていただければ良さがわかっていただけると思いますが、逆に使っていただかないとなかなかご理解いただけません。サンプル申し込みサイトをご用意していますので、ぜひお申し込みください。サンプルのお申込みはこちら。