その環境で腐食に耐える金属を使用すれば、ほかに耐食手段を講じる必要がなく、最も簡単な腐食対策であるといえます。このことから、ほかに防食手段がないとか、耐食金属を用いるのが安い場合に用いられます。実際の使用に当っては、その環境で試験して確認することが必要です。幾つかの実用例を紹介しましょう。
(1)低合金鋼
普通の鋼を炭素鋼といいますが、これに少量のCu、Cr、Ni、Moなどを加えて、特性を向上させたものを低合金鋼といいます。次のようなものがあります。
■耐候性鋼
少量のCu、Crなどを加えたもので、大気中で雨ざらしで使われると、防食性の高い錆が表面を覆い、この皮膜が数年かけて完成します。以後、腐食は進みません。
■耐海水鋼
護岸に用いられる鋼矢板や鋼管杭は、海面直上部分が海水のしぶきを受けて腐食します。これを防ぐために、鋼にCu、Ni、Pを含むものや、Cu、Cr、Pを含むものが代表的なものです。
■耐硫酸鋼
火力発電所のボイラーに使用する鋼で、燃料の含有する硫黄によって排ガス中に生成される硫酸に耐えるものです。CuとSb、CuとSbとSnなどを加えた合金、さらに、これらにCrやNiを加えた低合金鋼が使われています。
(2)ステンレス鋼
■フェライト系
鉄にCrを12〜13%以上加えたステンレス鋼で、表面にCrOの薄膜が形成され錆びにくいです。SUS405(Cr18%)、SUS430(Cr18%)、SUS446(Cr26%)などがあります。
■オーステナイト系
鉄にCrとNiを加えたステンレス鋼。Cr18%、Ni8%のSUS304が一番多く使われています。
■二相系ステンレス
CrとNiの量と比率を調節して、フェライト相とオーステナイト相がほぼ半分ずつになるようにしたステンレス鋼です。
■SUS304L
SUS304の弱点である塩素イオンによる粒界腐食などに耐えるよう、炭素含有量を0.030%以下にしたステンレス鋼です。炭素量が多いと、塩素イオンによってCrCが生成され、CrOができなくなって腐食を招くからです。これは、SUS316L、SUS317Lなどにも適用されています。
■SUS321、SUS347
ステンレス鋼にTi(321)やNb(347)を加えたもので、炭素と結合し易いこれらの元素が優先的にTiCやNbCとなり、CrCの生成を防ぎます。