ガス、水道、通信ケーブル、電力ケーブルなど、土中に埋設される金属体は多く、とくに近年は、エネルギー源としての石油や天然ガスなどの長距離輸送が埋設管によって大規模に行われ、安全上、これら土壌(土中)腐食の防食対策が重要になってきています。
土壌による腐食は、大気や水とはやや異なった趣きの腐食であります。土壌は、土粒、水滴、空気の混合物でありますから、薄い水膜による大気腐食と似たところがありますが、酸素供給量が少ないことや、乾・湿繰り返しが少ないことなどの相違があります。
また、土中における水分は、いろいろな成分を溶存していること、土の保水性や湿度などが場所によって違っていることなどから、酸素の供給量や拡散速度、水と酸素の作用でさまざまな腐食形態が生じます。
土壌の腐食に影響する因子としては、pH、電気導電率、含水率、排水性、通気性、化学成分(イオンの種類の濃度)などがあります。これらのうち、電気導電率は湿分とイオン濃度に関係し、含水率、排水性は湿分と関係しあっている因子であります。
土壌の多孔性は水や酸素の供給に制限を与えるため、土壌中の鋼の腐食は水や大気中に比べて基本的には小さくなります。腐食が均一に進んだとすれば、大きくても0.06mm/年くらいであろうといわれています。
しかし、土壌は鋼の腐食を極めて不均一化しやすい環境であります。重要なことは、金属面への酸素の拡散量であって、これは土の多孔性や含水量によって変わってきます。酸素量が多いほど腐食は進行しますが、ときには酸素濃度に濃淡を生じ、濃淡電池を形成し腐食を促進させます。
このような土質の問題として、例えば、砂地と粘土質の土壌が混じり合っているところに配管が敷設されていると、砂のほうがはるかに通気性がよいから、通気差腐食による腐食の局所化が生じやすいといわれております。
また、実用的には、土壌腐食の最大の問題は、土中に埋設された配管に生じる上記の通気差腐食もさることながら、配管が建物の鉄筋などの触れやすく、あるいはバイポラー現象によって、一種の異種金属接触腐食によって、腐食が促進されることであります。
直流の電流が金属から環境へ流れ出ると、流れ出た金属に腐食を生じることは前に述べましたが、腐食電池ができなくてもこのようなことが起きます。
直流の電車や金属精錬工場などから大地に漏れ出した電流は、パイプラインなど埋設された構造物に入り、再び大地に出て行きます。このような電流を「迷走電流」といいますが、迷走電流による腐食(電食ともいいます)は、土壌中でしばしば問題になります。同様な腐食は土壌中ほど頻度は高くありませんが、淡水や海水中でも生じております。これを「迷走電流腐食」といっております。
これらの土壌腐食を防止する方法は、いろいろ考えられておりますが、費用の点がネックになり、敷設前のコールタール系塗装と電気防食法が採用されているようです。