通気差腐食は、水中の酸素濃度の差によって起こる腐食で、通気差電池を形成した環境で、起きる腐食です。
実験例として、【図1】に示すように、素焼きなどの隔膜で仕切られたガラス容器に3%食塩水を満たし、それに研磨した鉄板2枚を電線でつないで、それぞれの容器に浸漬します。ガラス管で、一方の鉄板には空気を、他方の鉄板には窒素ガスを吹き込みます。暫らくすると、窒素を吹き込んだ鉄板が腐食します。容器を隔膜で仕切るのは、両方の液が混じらないようにするためと、電流は流れるようにしたいためです。
この腐食は、空気を吹き込んだほうの鉄板は、次のような溶存酸素の還元反応を受け持ち、窒素ガスを吹き込んだほうの鉄板は溶解を起すという、通気差電池の形成によって起きています。
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具体的な例として水中へ打ち込まれた杭の腐食をみてみましょう。長時間の経過によって、水面のすぐ下の部分に局部腐食がみられます。
これは【図2】に示したように通気差腐食であります。杭の水面では、水の表面張力によってすこし吸い上がっています。この面は水の層が薄いこともあって、空気中から酸素がよく供給され、水に遮られて酸素の供給がこれに比べてよくない水面下の部分との間に通気差電地が形成されるからであります。
また、古い水道管などには鋳鉄管がよく使われていますが、腐食が進んでさびがこぶ状になっているのをよく見かけます。これを「さびこぶ」と呼んでいるそうですが、このさびこぶを取り除くと、その下の鋳鉄管に腐食が進行しています。
この場合も通気差電池のいたずらで、鋳鉄菅を覆っているこぶさびの周辺は、溶存酸素が豊富なのに対し、こぶさび下部は酸素が届きにくいので、こぶさび周辺とこぶさび下部との間に通気差電池を形成し、こぶさび下部の腐食が進行することになります。