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超音波センサの原理とTOF測距計算|透過/反射型・温度補償

検出方式と温度補償の要否を技術的根拠から判断したい担当者向けです。圧電素子の原理・TOF測距式・対向型/反射型の仕様差・音速の温度補償が選定基準になります。

このページの目次

圧電素子の仕組み:逆圧電効果による超音波発生と受信

超音波センサの中核部品は圧電素子(ピエゾ素子)です。圧電素子とは、機械的変形を電気信号に変換する「圧電効果」と、逆に電気信号を機械的変形に変換する「逆圧電効果」の両方を示す材料で構成された素子です。超音波センサにおける超音波の発生は逆圧電効果を利用し、受信は圧電効果を利用します。

逆圧電効果による超音波発生メカニズム

圧電材料(代表的なものはPZT:チタン酸ジルコン酸鉛)に交流電圧を印加すると、電場の向きに応じて結晶格子が伸縮し、素子が振動します。この振動周波数が超音波帯域に設定されると、素子前面に超音波ビームが放射されます。産業用超音波センサでは40kHz~400kHz帯が多く使われ、周波数が高いほどビームの指向性が鋭くなり、低いほど到達距離が伸びる傾向があります。圧電素子はその固有共振周波数で最大の振動振幅を示すため、駆動回路は共振周波数に合わせた周波数で素子を励振する設計です。

圧電素子の構造は、薄い圧電セラミックディスクに電極を貼り合わせた単純な構成が基本ですが、実用品では音響マッチング層(送受信効率改善)やバッキング材(不要な背面振動の減衰)を組み合わせたアセンブリです。

音響マッチング層の材料・厚みは、圧電素子の音響インピーダンスと伝播媒体(空気・液体)の音響インピーダンスの差を緩和し、エネルギー伝達効率を高めるために最適化されます。空気中の音響インピーダンスは約0.0004MRayl、PZTセラミックスは代表値で約30 MRayl程度と大きな差があり、マッチング層なしでは素子表面での反射損失が極めて大きくなります。

圧電効果による超音波受信メカニズム

送信した超音波が対象物に当たって反射し、再び素子に到達すると、超音波の疎密波(圧力変動)が素子を微小変形させます。この機械的変形が電荷を発生させ、電圧信号として取り出されます(圧電効果)。この信号は微弱なため、内蔵または外付けのアンプで増幅した後、信号処理回路に渡されます。送信と受信に同一素子を使う「送受信共用型」と、送信素子・受信素子を分離した「送受信分離型」があり、送受信共用型はコンパクトに構成できる反面、送信直後の不感帯(ブラインドゾーン)の影響を受けやすいという特性があります。

工業用PZT系圧電セラミックスのキュリー温度は概ね150~350℃であり、この温度を超えると分極が失われて圧電特性が消失します。したがって高温環境での使用時は、センサの定格温度と設置環境温度の整合確認が設計上の重要チェック項目です。

また、繰り返し衝撃や過大な電圧印加による素子割れも故障モードとして知られており、取り付け時の機械的衝撃に注意が必要です。耐環境性を重視する場合は、ステンレスや耐薬品性樹脂で素子をモールドした封止構造のセンサを選定することをお勧めします。

TOF法(飛行時間法)による距離計算:計算式と測定精度

超音波センサが距離を計測する基本原理はTOF(Time of Flight:飛行時間)法です。超音波パルスを送信してから、対象物で反射したエコーを受信するまでの時間を計測し、その時間と音速から距離を算出します。この手法はシンプルでありながら非接触・高分解能という特長を持ち、産業現場での距離・液位計測に広く採用されています。TOF法は光学式(レーザ・光電)とは異なり、対象物の色・透明度・表面光沢の影響を受けにくいため、透明体・半透明体など、光学式で検出しにくい対象にも適用できる場合があります。

基本距離計算式

TOF法の基本式は以下のとおりです。

d = (c × t) / 2

d:センサ~対象物間の距離 [m] / c:音速 [m/s] / t:往復飛行時間 [s]

式中の「2」は超音波が往復する(センサ→対象物→センサ)ことを考慮した係数です。例えば音速を340m/s(常温の概算値。20℃の厳密値は343.5m/s)とした場合、往復時間t=1msであれば距離dは170mmとなります。距離計測型センサでは、このTOF値をマイクロコントローラがリアルタイムで演算し、アナログ電圧(0~10V)または電流(4~20mA)として出力する構成が一般的です。

測定精度に影響する要因

TOF法の理論上の分解能は、タイマの時間分解能と音速の積で決まります。例えば、時間分解能を1μsとすると、時間計測だけから求めた距離分解能の理論値は約0.17mm(340m/s × 1μs ÷ 2)です。ただし実際の測定精度は以下の要因によって制限されます。

誤差要因概要主な対策
音速の温度依存性気温1℃変化で音速が約0.6m/s変動温度センサによる音速補正(後述)
エコー検出閾値受信波形の立ち上がり判定誤差閾値最適化・ゼロクロス検出回路
多重反射(マルチパス)壁・隣接物からの迷走エコービーム角度調整・ゲイン制御
対象物の表面状態吸音材・傾斜面でエコーが弱化受信感度設定の最適化
不感帯(ブラインドゾーン)送信直後の素子残響でエコー検出不可最小検出距離仕様の確認

音速と周波数の関係

超音波の波長λは次式で表されます。

λ = c / f

λ:波長 [m] / c:音速 [m/s] / f:周波数 [Hz]

例えば、40kHz・音速340m/sの場合、波長は8.5mmとなります。ただし高周波ほど空気中での減衰が大きく、到達距離が短くなるというトレードオフがあります。設計者はこのトレードオフを踏まえ、要求される検出距離と分解能に合致した周波数帯のセンサを選定します。

透過型(対向型)超音波センサの詳細仕様と用途

透過型(対向型)超音波センサは、送信器(エミッタ)と受信器(レシーバ)を対向配置し、その間を通過する物体を検出する方式です。送信器から放射された超音波ビームを受信器が常時受信しており、被検出物がビームを遮ると受信レベルが低下することで物体の存在を検知します。

この方式は対象物の色、透明性、表面光沢の影響を受けにくく、透明フィルム・ガラス板・液体など、一般的な光電センサでは検出困難な対象にも有効です。特に食品・製薬・半導体製造の各ラインでは、クリーン環境対応・耐薬品性材質の透過型超音波センサが採用されています。

透過型の動作原理と構造

送信器と受信器は軸調整が必須であり、取り付け精度が検出安定性に直結します。ビーム軸がわずかにずれると受信レベルが低下し、誤検出やS/N比悪化の原因となります。このため、透過型センサの取り付けブラケットには調整機構を設けるか、専用の位置決め治具を使用することを推奨します。

送受信間距離(検出距離)は機種によって数十mm~数m程度まで対応する製品があります。検出可能な距離や指向特性は、使用周波数だけでなく、振動子の大きさ、送信出力、受信感度、信号処理などによって決まるため、製品仕様を確認する必要があります。一般に対向型は反射型よりも高いS/N比が得られるため、検出対象が微小・薄膜・軽量な場合でも安定した検出が期待できます。

透過型と反射型の仕様比較表

仕様項目透過型(対向型)反射型(直接反射型)反射型(回帰反射型)
送受信構成送信器・受信器 分離2体送受信 同一ヘッド(1体)送受信 同一ヘッド+反射板
検出原理ビーム遮断検出対象物からの直接エコー反射板エコーの変化
対象物依存性反射型に比べて対象物の色・表面反射率の影響を受けにくい表面状態・材質に依存中程度(大型吸音体は困難)
配線・設置工数高(2ヘッド配線が必要)低(1ヘッドのみ)中(ヘッド+反射板取り付け)
代表的な検出距離数十mm~数m程度数十mm~数m程度数百mm~数m程度
距離連続計測不可(ON/OFF検出)可(TOF演算)通常はON/OFF検出。対応機能は機種および設定による
主な用途例透明体検出・ボトル検査・薄膜検知液位計測・近距離物体検出搬送ライン監視

透過型の主な産業用途

透過型超音波センサが特に有効な用途として、食品・飲料ラインでのPETボトル・ガラス瓶の有無検出があります。一般的な光電センサでは透明体の検出が不安定になる場合があります。透過型超音波センサは対象物の光学的な透明性や色の影響を受けにくい点が特徴です。

また、製薬ラインにおけるアンプル・バイアルの整列確認、フィルム・シートの通過検出などにも広く使われています。

設置スペースと配線コストが許容できるならば、対象物からの反射波を利用せずに有無を検出できる方式として、有力な選択肢になります。

反射型超音波センサの詳細:直接反射・回帰反射の違い

反射型超音波センサは、送信部と受信部を同一のセンサヘッドに備え、反射エコーを利用して対象物を検出する方式です。反射型はさらに「直接反射型」と「回帰反射型」に分類され、それぞれの動作原理・適用対象・注意点が異なります。設計段階でこの違いを正確に把握し、適切な方式を選択することが誤検出防止・安定稼働の基本です。

直接反射型の原理と特性

直接反射型(拡散反射型)は、対象物そのものからの反射エコーを受信して距離または有無を検出する方式です。センサと対象物の距離がTOF法によって算出されるため、検出・距離計測の両方に使用できます。この方式の性能は対象物の材質・形状・表面粗さに大きく依存します。

金属板や硬質で平滑な対象物では比較的強い反射エコーが得られる場合があり、吸音性の高い多孔質素材(スポンジ・綿素材など)はエコーが弱く、検出距離が短くなります。また、対象物がセンサ軸に対して大きく傾いている場合、反射エコーがセンサ方向に返ってこず検出が困難になる場合があり、取り付け角度の調整が重要です。

液面計測においては、液面が揺れると測定値が変動するため、計測サイクルの平均化処理や揺れが小さい位置へのセンサ配置が有効です。

直接反射型の代表的な用途は、タンク・ホッパーの液位・粉体レベル計測、コンベア上の搬送物検出、ロボットアームの近傍物体検出などです。特に液位計測では、被測定液がセンサと接触しない非接触で計測できるため、接液を避けたい用途の候補となります。使用温度、耐薬品性、保護構造などは機種仕様を確認してください。

回帰反射型の原理と特性

回帰反射型は、センサの対向位置に反射板を設置し、そこから戻る基準エコーの変化によって物体を検出する方式です。対象物がセンサと反射板の間に入ると、超音波経路が遮断・減衰し、受信レベルが低下します。対象物そのものから強い反射エコーを得る必要がないため、傾斜面、凹凸面、吸音性のある物体など、直接反射型では検出しにくい対象にも適用できる場合があります。また、対向型のように受信器を別置きする必要がなく、配線を簡素化できます。

一方、反射板の位置ずれや、粉塵・油・結露の付着は受信レベル低下の原因となります。設置時には十分な基準エコーが得られるよう位置と角度を調整し、使用環境に応じて清掃・点検を行います。

直接反射型・回帰反射型の選定ポイント

選定ポイント直接反射型が有利回帰反射型が有利
片側アクセスのみ○(反射板が不要)△(反射板設置スペース必要)
対象物の材質が不定△(吸音性、凹凸、傾斜などの影響を受けやすい)○(対象物自体から反射エコーを得る必要がない)
距離計測が必要○(TOF演算で連続計測可)×(通常はON/OFF検出用途が中心)
透明・半透明体の検出△(厚み・材質・姿勢によって反射エコーが不安定な場合あり)○(光学的透明性の影響を受けにくい)
メンテナンス負荷○(センサのみ管理)△(反射板の清掃・位置確認が必要)

温度による音速変化と補償回路の役割(音速計算式含む)

TOF法の精度は音速の正確さに直結するため、音速の温度依存性は超音波センサの測定誤差の主要因のひとつです。空気中の音速は温度によって変化し、温度が高いほど音速は速くなります。この特性を無視して固定値で距離演算を行うと、温度変化に比例した系統誤差が生じます。製造現場では炉周辺や冷凍倉庫など温度が大きく変化する環境も多く、温度補償の有無が計測精度に大きく影響します。設計者は使用環境の温度変動範囲を事前に把握し、温度補償機能の要否を仕様段階で判断します。

空気中の音速計算式

空気中の音速は気温で変化し、常温付近では次の式で簡易的に近似できます。

c = 331.5 + 0.6 × T

c:音速 [m/s] / T:気温 [°C]

この式から、気温が0℃のとき音速は331.5m/s、20℃で343.5m/s、40℃で355.5m/sとなります。0℃~40℃の範囲で音速は約24m/s変化し、これは約7%の変動率に相当します。距離計測においてこの補正を行わず、20℃の音速(343.5m/s)を固定値として演算した場合、0℃や40℃では音速が約12m/s(約3.5%)ずれるため、例えば500mmを計測する系では最大約18mmの誤差が生じる計算になります。

温度補償回路の構成と動作

温度補償を実装する代表的な方法は、センサ内部またはその近傍に内蔵温度センサを組み込み、リアルタイムで気温を計測して音速補正値を演算する方式です。マイクロコントローラが温度データを取得し、TOF演算時に音速cの値を動的に更新することで、温度変化による測定誤差を低減します。

補償回路を持つ製品は「温度補償機能付き」として仕様書に明記されることが多く、温度補償なしの製品に比べて、気温変動時の測定精度が向上します。温度変動が±5℃以内に収まる恒温環境であれば補償なしでも実用精度を確保できる場合がありますが、屋外設置・熱源隣接・季節変動のある場所では補償機能付きを選択することが強く推奨されます。

音速補償の実装形態

補償方式構成特徴
内蔵温度センサ方式センサ筐体内に温度センサ内蔵追加配線不要。外気温との差が生じる場合あり
外部温度センサ方式別置きの外部温度センサをコントローラに接続音路に近い位置の温度を取得
補償なし(固定音速)設計値固定恒温環境のみ適用。低コスト

超音波センサの欠点・苦手な検出対象

非接触で、対象物の色や光学的透明性の影響を受けにくい超音波センサにも、検出が不安定になりやすい条件があります。導入前に次の点を確認してください。

  • 吸音性の対象:発泡体・綿・布・フェルトなどは音波を吸収し、反射エコーが弱くなります。
  • 傾いた面・微小な対象:音軸に対して傾いた面や小さな対象は反射が散乱し、検出が不安定になります。
  • 温度・気流の変動:音速が温度で変化するため、補償しないと距離誤差が生じます。強い気流もエコーを乱します。
  • 近距離の不感帯:送受信の切替時間により、センサ近傍には検出できない不感帯(ブラインドゾーン)があります。

※適用可否は対象物・環境により異なります。最終判断はメーカー仕様・実機評価で確認してください。

よくある質問

超音波センサのTOF法による距離はどう計算しますか?

超音波パルスを送信してからエコーを受信するまでの往復時間tと音速cから、d=(c×t)/2で距離を算出します。式中の2は超音波が往復することを考慮した係数です。音速340m/s(常温の概算値。20℃の厳密値は343.5m/s)で往復時間t=1msの場合、距離は170mmとなります。

超音波センサに温度補償が必要なのはなぜですか?

空気中の音速は気温で変化し、常温付近ではc=331.5+0.6×Tの式で近似されます。特に、屋外、熱源の近傍、温度変化の大きい工程などでは、センサ周辺と測定経路の温度差によって測定値が不安定になることがあります。こうした環境では、温度補償機能を備えた機種を選定し、実際の使用条件で精度を確認することが重要です。屋外設置や熱源隣接など温度変動のある環境では温度補償機能付きを選びます。

透過型と反射型の超音波センサはどう使い分けますか?

対象物そのものから十分な反射エコーを得にくい場合や、透明体、傾斜面、凹凸面のある対象などを安定して検出したい場合は、透過型(対向型)や回帰反射型が有力な選択肢です。一方、反射板を設置せず、センサ単体で有無検出や距離測定を行いたい場合は直接反射型が適しています。また、距離を連続的に測定する用途ではTOF法を用いる直接反射型が一般的です。回帰反射型は、反射板を設置できる環境で、有無検出を安定して行いたい用途に適しています。

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